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「みんな青春って知ってる?」

松野家の二階、六つ子の部屋で私は六人にそう聞いた。

「性別の性に春で性春?」
「違う」
「じゃー興味なーい」
「ごめんね杏里ちゃんこの人はただの小六のエロガキだと思って」
「大丈夫だよチョロ松、最初からおそ松以外に聞いてるからね」
「やだやだやだ〜!俺にも聞いてよ〜!」
「他に青春知ってる人ー?」

駄々をこねたおそ松は放っておいて他の五人に聞く。
それぞれが考え始めてくれたので、しばらく時間をあげた。
よし、順番に聞いて回ろう。

「…はい、じゃあチョロ松!」
「えっ、僕から?えーと、改めて説明するのって難しいな…思春期にしか過ごせない時間とかそういうこと?」
「なるほど。じゃあカラ松」
「青春…それは愛と煌めきの」
「十四松」
「野球!」
「高校野球とかあるもんね。トド松?」
「え〜っと、若く元気な時代、主に青年時代を指す、って辞書に書いてるよ。チョロ松兄さんが近いんじゃない?」

私は頭を振った。

「そうなんだけど、そうじゃないの。一松は?」
「え…」

一松はちょっと黙って、

「俺達に一番縁遠いもの」

と言った。

「それ!それだよ一松!」
「マジすかあざす」
「え、そういう意味?」
「俺達にとっての青春って意味ねー」

おそ松がごろりと床に転がって、「で、それがなに?」と気だるげに聞く。

「私思いついたことがあるの。ここにいる全員、学生時代にいわゆる『青春』って感じの時間を過ごしてこなかったと思わない?」
「確かに。僕たちも杏里ちゃんも恋人いなかったしね…」

トド松がため息をつく。

「みんな小学生の頃は揃って悪ガキで輝いてたけど、中学高校とどんどんクラス内でのポジションが変わったって思ったことはない?」
「あ…ありすぎて心が痛い…」
「やめて杏里ちゃん!」

みんなが落ち込んでしまった。

「ごめんね…でも私も、悪ガキじゃなかったけどいまいちパッとしない学生時代だったからさ」
「あーそうだな。杏里も地味な女子高生だったもんなー」
「そうなんだよ」

嫌な思い出があるわけじゃないけど、決してリア充ではなかった。
だから二十歳を越えた今、私は思いついたのだ。

「今から青春やり直さない?」
「どういうこと?」

部屋の真ん中に座ったら、みんな集まってきてくれた。
六人が円になって私を見ている。

「まあただの暇潰しなんだけどさ…いわゆる『青春』って感じのシチュエーションを私たちでやるの」
「ほうほう」
「リア充になれなかった者同士だから無理にテンション上げたりしなくていいし、雰囲気だけ味わえばオッケーって感じで。名付けて青春クラブ」
「何それ楽しそう〜!」
「野球もできる!?」
「うん、しようしよう」
「それやってて悲しくなんない…?」
「また出たよクールクソダサ童貞」
「別にいいよチョロ松兄さんは参加しなくても。ねー杏里ちゃんっ」
「うん、無理強いはしないよ」
「べ、別に参加しないとか言ってないだろ!」
「良かった。みんな一緒じゃないとやっぱり寂しいもんね」

下らないと一蹴されるかと思ったけどみんな乗ってくれて良かった。

「じゃあ杏里ちゃん、僕と放課後デートっぽいことしよ!」
「え!?そういうのあり!?」
「杏里、俺と海「野球しよー杏里ちゃん!」
「えっ…えっとじゃあ僕は…あー何しよう…!」
「一松は何かしたいことある?」

一人黙り込んだ一松に問いかけると、かなり難しい顔をされた。

「…今まで青春らしい時間過ごしたことないから何も思いつかない」
「ああ、それはそうかも…」

言い出した私も、そんなにシチュエーションが思いつくわけじゃない。

「んじゃさ、何か自分のやってほしいのがあったら杏里にやってもらえばいいんじゃね?」
「それいいねー!さっすがおそ松兄さん!」
「そーいうわけだから杏里、よろしく!」
「よろしくおなしゃぁっす!」
「「「「「おなしゃす!」」」」」

十四松の言葉で全員に頭を下げられた。

「あ…こちらこそよろしく」

私も頭を下げた。
思いのほかみんなに気に入ってもらえたみたいだ。
あれ?でも「私にやってほしいこと」にすり変わってるような…
いや、でも私もみんなと青春しようと思って提案したんだから、間違ってはないか。
さて、みんなと何しようかな。



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