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「みんな元の姿に戻ったんだね」
「うん、もうF6飽きちゃって。短期間に何回かやるとさすがに僕らも飽きるよ」

戻った瞬間ギャラリーが蜘蛛の子散らすように去ったよね〜、とトド松くんが遠い目をした。

「でも戻ってくれて良かった、これでみんなで遊べるね」
「だね!あ、さっきウォータースライダー見つけたんだー。三種類あるみたいだよ。後で一緒に行かない?」
「そんなのあったんだ!いいよ、楽しそう!」
「混んでたから、先に何か食べてからお昼頃に行ってみるっていうのはどうかなぁ。杏里ちゃん今お腹空いてる?」
「うん、軽い物なら食べたいな」
「フードコートに台湾スイーツのお店があるらしいんだ〜。そこ行ってみない?」
「トド松くん詳しいね…!」

すらすらと出てくる行動計画に感心していたら、トド松くんが「まあね」と照れ笑いした。

「せっかく杏里ちゃんたちと行くんだから、ちょっと下調べしといてエスコートしてあげたいじゃない?」
「わぁ、王子様みたいだよトド松くん…!」
「杏里ちゃん僕のお姫様になってくれる?なんてねっ」
「トド松くんが言うと似合うね」

全然違和感がないんだもん。

「ほんとに〜?ありがとっ」
「おいあざトッティ何ぶりっ子してんだ」
「うわおそ松兄さんいたの」
「うわって何だよさっきからお前のリア充ぶって頑張ってる姿ずっと見てたよ」
「り、リア充ぶって頑張ってるとか言わないでくれない!?しかも杏里ちゃんの前で!」
「おそ松くんはトト子ちゃんと一緒じゃなかったの?」

ケンカが始まっちゃいそうだったから、すかさず口を挟んだ。

「あートト子ちゃんはミュージックビデオのロケハンに行ったよ、チョロ松従えて」
「ミュージックビデオ?」
「ほら、アイドル活動のやつ」
「さっすがトト子ちゃん、抜け目無いねぇ!」

確かに、この南国風リゾート地だといい映像が撮れそう。

「カラ松も一松も十四松もどっか行っちゃったしさぁ、お兄ちゃん寂しくて死にそうだったわけよ。だからまーぜーてっ」
「全然可愛くないね僕と同じ顔なのに」
「お前と同じ顔だからだろ。しかもお前にアピールしてないし〜こないだ寂しがってる俺が可愛いって言ってくれた杏里ちゃんにだし〜」
「ああ…ふふ、そんなこと言ったねそういえば」
「えーっ微妙な反応…!」
「はいはい、僕たち今からスイーツ食べに行こうって言ってたんだけど、おそ松兄さんも来る?」
「行く行く!」

浮き輪をレンタルコーナーに返してフードコートに向かう。
一松くんと十四松くんはあれからどこかに行っちゃったみたいで姿が見えなかった。
カラ松くんはおそ松くん曰く「どうせカラ松ガールズでも探しに行ってんだろ」らしくて、やっぱりどこにもいなかった。

「違うよおそ松兄さん、探しに行ってるんじゃなくて『運命の糸を手繰り寄せてる』んだよ」
「いッ…たたたたた」
「ふふふ…カラ松くんって小説みたいな表現するよね」
「うわー杏里ちゃん素敵な感じに言ってくれちゃったねー」
「杏里ちゃんは感受性豊かなんだよ」
「そ、そうかな…さらっとそう言う言葉が出てくるのってすごいと思ったんだ」
「あーまあカラ松兄さん演劇部だったしねー」
「あ、そっか。だからかぁ」
「子供の頃はそーでもなかったのにいつからああなっちゃったんだろ?」
「おそ松兄さんは奇跡的にそのまんまだよね」
「おそ松くんは昔から寂しがりなんだ?」
「そーだよー」
「クズっぷりも昔からだよ」
「あ?クズはお前らそれぞれだからね?俺が一番ノーマルクズってだけでお前らは違うバリエーションってだけだからね!?」
「つまり全員クズってことざんしょ」
「あーそうそう。……イヤミィィィィィ!?」

おそ松くんの声にびっくりして顔を向けると、見かけたらすぐ逃げてと言われていた怖い人がいた。

「何でここにイヤミなんかがいんだよ!」
「なんかとは失礼な。ミーはここに店を出してるざんすよ」
「はぁ!?イヤミの店ぇ!?」
「杏里ちゃん」

トド松くんがこっそり私を呼んで背中に隠してくれた。
でも、イヤミさんは気付いたみたい。

「ん?誰ざんすかその子?六つ子の誰かの彼女…なわけないざんすねぇ!チミ達ダメニートに彼女ってもうほぼ犯罪ざんすよ!」
「くっ…そうだけど…ニートは確かにそうだけど…っ!」
「ぶん殴りてぇ…!」

高笑いするイヤミさんは確かに悪役っぽい。

「で、何の店出してるって?教えてよ、ぜってー行かねぇから」
「悪い噂流しといたげるね〜」
「やめるざんす!いっつもいっつもチミ達はミーの邪魔ばっかりして…こらおそ松!ツイッターで拡散するなざんす!」
「トド松ですぅ!」
「誰でもいいざんすよ!大体、チミ達がミーの身ぐるみ剥がしていった時からミーは可哀想にも橋の下に住むはめに」
「身ぐるみを…!?」

慰謝料をもらったって話は聞いたけど、そんなに取ったのかな…

「ちょっ、杏里ちゃん違うよ?あれはイタズラで」
「なぁにが違うざんすか!覚えてるざんすよ、ハロウィンの時に家を解体する勢いで何から何まで持っていっちゃって」
「えっ」
「杏里ちゃんとか言うチミ、気を付けた方がいいざんすよ…金が絡むとこいつらは悪魔ざんす」
「そ、そうなんですか…?」

ハロウィンの話は聞いたことないけど、今聞いた限りだとおそ松くんたちが勝手に物を持ち出したみたいに聞こえるんだけど…
と、急におそ松くんたちがイヤミさんを拘束しだした。

「ちょっ、な、何するざんす!」
「杏里ちゃん逃げろーっ!早くこの場から離れるんだ!さもないと杏里ちゃんの前歯も伸びてしまうぞ!」
「この残虐非道高額納税者は僕たちが抑えておくから、早く耳をふさいで逃げるんだ!」
「だからそれ後半は悪口じゃないざんすよ…」
「え、えっと…わ、分かった…!」

イヤミさんは特に私に何かしそうではなかったけど、おそ松くんとトド松くんがすごく鬼気迫った表情だったからとりあえずこの場を離れることにした。
しばらく歩いたところで、柱の陰に隠れる。
ちらっと覗くと、まだ何か言い合いをしているみたいだった。
体を戻してふうと息を吐く。
想像してたよりは怖い人じゃなかったな。
金が絡むと悪魔、って、おそ松くんもイヤミさんに対して似たようなこと言ってたし。
昔からの知り合いって言ってたけど、今見た限りだとどっちもどっちって感じだなぁ。一人で笑ってしまった。
さて、もうしばらく経ったし出ていってもいいかな。こっそり顔を出した。
でもそこには、三人ともいなかった。

「…あれ…?」

もしかして言い合いしながらどっか行っちゃったのかな。
慌てて戻ってみても、三人の姿はどこにもなかった。
一人ぼっちになってしまった。
周りのざわめきがちょっとだけ遠くに感じる。
この広い施設の中、みんなを探し出すのは大変そうだな。迷子放送で呼び出してもらうほどでもないし…
一松くん、今何してるのかな。
とりあえず、もう一度レンタルコーナーで浮き輪を借りてきた。
流れるプールで回ってたら、誰か一人ぐらい見つかるかもしれないしね。







十四松を再度プールの底に沈めたところで気付いた。
俺何しに来たんだっけ。

―――――杏里ちゃん。

首がちぎれる程のスピードで元いた場所を振り返った。
いない。

ですよね愛想尽かされますよそりゃ。何の断りもなくいなくなったらそりゃほっとかれますよこっちも。死ねとか思われて当然ですよ。
あーこれもうだめだ。だめなパターンだ。さっき何気にいい雰囲気っぽかったのが一気に台無し。もう取り戻せない。永遠にあの時間は戻って来ない。今日で縁切られるかも知れないし。というかもうあの場にいないってことが答えでしょ?溺死しよう。短い夢でした。

「一松にーさん見て見て!」

俺の元気を引き出したいのか十四松があの子にやったような噴水芸をやっているが、全く俺の心には響かない。
しかし十四松を怒る気にはもうなれない。こいつは十四松なだけだ。俺大人になったな。
墓から蘇りたてのゾンビのように元の流れるプールに戻るがもちろんさっき見た通り杏里ちゃんはそこにはいない。
とりあえず杏里ちゃんがいた場所で立ち止まってみた。流れるプールの中で一人だけ時が止まっている。

「一松兄さん何してんの?」
「無情を噛み締めてる」
「哲学だね!」
「杏里ちゃん…」
「杏里ちゃんさっきトッティと一緒にいなかった?」
「トド松ゥゥゥゥゥ…!!!」

何なんだよあいつ!!俺が杏里ちゃんをす…す…す…気付いてんだろ!!何で持ってっちゃうんだよ!?リア充ぶってたら有りなのか!?許されるのか!?死ね!!!
つか怖いのはトド松も杏里ちゃんとそこそこ仲いいってとこなんだよ…杏里ちゃんトド松のことおしゃれとか言ってたし。杏里ちゃんもおしゃれだし。水着クッソ可愛かったし。
俺が白がいいとか言ったから白にしたとか可愛すぎんだろがァァァァァァァァァァァァァクソがァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

「何にも言ってないのに周りの人引かせるとか一松にーさんすごいね!」

そのおしゃれな杏里ちゃんと?
おしゃれなクソ末弟が出会って?
おしゃれな子供が産まれるんですか???
はいキレました〜〜〜〜マジ末弟処刑だから。マジ有り得ないから。兄のす…す…す…隙有らば横取りとか有り得ないから。昔のエジプトの法律とかだったら即耳とかはねられてるレベル。

「大丈夫です!皆さんに危害は加えません!この線より内側に入らなければ大丈夫です!」

トド松どこだ。色々と切って喰わせてやる。
ようやく水の中から出た。心なしか体の表面の水が蒸発している気がする。

「大丈夫です!係員の指示に従って慌てず避難をお願いします!」

逃げ惑う人混みの中から憎むべき同じ顔を探しているとフードコートの前に標的を発見した。おそ松兄さんと虎の餌もいるっぽいが今はどうでもいい。

「トド松ゥゥゥゥ……」
「うわーっゾンビじゃなかった一松兄さん!?何!?」
「返せ……」
「え?な、何を?」
「おいトド松お前何か取ったの?」
「人の物を取るのは良くないざんすよ」
「何も取ってないよ一松兄さんの物は!十四松兄さんと一緒にいたんじゃなかったの!?」
「返せ……」
「だめだトッティ、感情が上回って言語能力が低下してる」
「とりあえず場所移動しよう、さっきから周りの視線が痛いよ…!」

二人に人気のない所へ連れていかれた。ここに杏里ちゃんがいると言うのか。

「で、何を返せって?」
「………杏里ちゃん」
「ああ杏里ちゃんならさっき逃がしたよ」
「そうそう、イヤミに金づるにされそうだったから」

あの男やはりあの時喰わせておくべきだった。
じゃあ今杏里ちゃんはどこに。

「あっちの方歩いてったけど、もしかしたらまだいるかもよ?」

二人に連れられてその場所に行くが、既に姿は消えていた。


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