突然の誘い




目の前に差し出された携帯電話はまだ鳴り続けたままで、戸惑う静雄は縋るような目を臨也に向けた。
だが臨也は意地の悪い笑みを浮かべるだけで、静雄は諦めて携帯電話を手に取った。

「はい、もしもし…。」

『お、やっと繋がった。』
微かに震える声を隠しながら電話に出れば、トムの優しい声が耳に届く。
思わず緩む口元を慌てて引き締めるが、臨也の鋭い視線は見逃してはくれなかった。

『静雄、今ヒマか?』

「え、あ…。」
携帯電話に耳を近付けて二人の会話を聞いていた臨也が小さく笑う。

『ヒマだったらよお、俺んちで飲まね?』
もう既に少し酔ってるらしいトムが軽い調子で問う。
もちろん静雄は断るつもりで口を開くが、声を出すことができなかった。

「っ!」
臨也の手が、静雄の股間に触れる。
いきなり与えられた刺激に、静雄は鋭く息を飲んで臨也を睨み付けた。
他人が見れば裸足で逃げ出す程の眼光に怯むこともなく、臨也は更に手付きをいやらしくさせていく。

『…静雄?』

「あっ、はい…。」
急に黙り込んでしまった後輩の様子に、トムは酔っていても心配したらしく不思議そうに静雄を呼ぶ。
その声に、静雄の反応を見ながら楽しそうに笑う臨也から電話へと意識を集中させた。

『で、どうする?来るか?』

「いや、今日は…うあっ!?」
用事がある、と告げようとしたところで静雄は上擦った声を上げた。
いつの間にか臨也の手は静雄の下着の中に侵入を果たしていて、静雄自身に直接触れていたのだ。

『し、静雄?どうした?』
突然聞こえた静雄の変な声に、トムは驚いたのか問い掛けてくる。

「あ、や…何でもな、ひ…っ!」
心配かけまいと返した答えを邪魔するように、臨也は静雄の屹立を弄ぶ。
先走りが滲む先端を親指で撫でられて、体が小さく痙攣する。

「今から行きますって早く言いなよ、ほら。」
電話を当てていない方の耳に唇が寄せられ、トムには聞こえないくらいの小さな声でそう囁かれた。
思わず見開いた視界に飛び込んできた臨也の表情は、悪意に満ちていた。

抵抗は許さない。
臨也の冷たい瞳と自身を握り込む手、口元に浮かべた笑みがそう伝えている。

「あの、トムさん、大丈夫です…。もう少ししたら、そっち向かいますね。」
声が震えてしまわないように気を付けながら、それだけ告げた。




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