君を呼ぶ




「次はシズちゃんが気持ち良くなる番だよ。」
その言葉に慌てて身を起こすが時既に遅く、臨也の手が緩く勃起した静雄の股間をゆっくりと撫で摩る。

「や、めろ…っ。」
いきなり与えられた刺激にビクリと肩を揺らして力の入らない手で臨也の肩を押し返すが大した抵抗にもならなかった。

「あはは、シズちゃんってば俺の触っただけで起っちゃうくらい淫乱だったの?」
底意地の悪い笑みを満面に浮かべた臨也は、これまた意地の悪い言葉を口にして静雄を煽る。
図星に近いことを言われた静雄は耳まで真っ赤だ。
そうしている内に手の動きは撫でるという生易しいものから揉み拉くという激しいものに変わり小さく息を飲む。

「んっ、んぅ…。」
はしたない声が漏れてしまわないように唇を噛んで焦れったい快感に耐える。
だが体は徐々に熱を燻らせていて、勝手に腰が小さく揺れ始めた。

「あーあ、腰まで揺らしちゃってさぁ…いやらしいなあ、まったく。」
嘲りを含んだ声が静雄を辱める。
羞恥に顔は真っ赤になり、目尻には涙すら浮かんでいて臨也は自分が酷く興奮している事に気付いた。

「…ねぇ、シズちゃん。」
熱の籠もった声が静雄の名を呼ぶ。
視線だけでそれに答えれば、臨也はいつもの余裕ぶった厭らしい笑みを口元に浮かばせる。
臨也の顔が近付き赤くなった耳朶に唇が寄せられ、吐息がそこを擽った時だった。

スラックスのポケットからよく耳に馴染んだ着信を知らせる音が鳴り響く。
顔を上げた臨也からは先程浮かべていた笑みがすっかり消えており、鳴り止まぬ静雄の携帯電話をポケットから荒々しく取り出した。

「……田中さんから、か。」
サブディスプレイをちらりと見て臨也が低く呟く。
そのまま携帯電話の持ち主に視線を移せば、困惑で顔を引き攣らせた静雄と目が合った。
途端、何が可笑しいのか臨也が口端を三日月の如く歪めて携帯電話を静雄の目の前に差し出す。

「ほら、早く出てあげなよ。」
有無を言わせぬ威圧感に、静雄は背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。



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