この感情を何と呼ぶ




あの池袋最強と呼ばれた男が今、自分の手中に堕ちた。
あまりにも簡単すぎて少し拍子抜けしたが、それでも歓喜に体が震えて笑いが止まらない。

「テメェ、正気か…?」
どうか嘘であってくれ、そう言わんばかりの声色で問われ喉奥で笑いを噛み殺した後に淡々と答えた。

「シズちゃん、俺は本気だよ?田中トムを消すってのも、君を俺の物にするのも、ね。」
言いながら、壁に押し付けさせていた体を少しだけ離してやり、その隙間に片手を忍び込ませてベストの釦を一つずつ丁寧に外していく。
掌で胸板を優しく撫でさすり、シャツ越しに乳首を指先で摘んだり爪で引っ掻いたりしていると、静雄の体がぴくりと小さく震える。

「だからさ、抵抗とかしない方が良いよ。…って、もう刃向かう気もないのかな。」
身動きできないように背中で捕らえていた腕を離しても、静雄は縋るように壁に手をつくだけで逃げようとしない。
少しばかり驚いてその表情を伺うと、耐えるように唇は噛み締められ瞼はぎゅっと堅く閉じられていた。

自分の事を犠牲にしてまで、田中トムを守りたいって訳か…。

そうでなければ計画に支障が出てしまうのだが、臨也は面白くなかった。

「や、ぁ…っ。」
空いた片手を下肢に伸ばし、スラックスの上から股間に手を這わせる。
びくんと静雄の体が跳ね、逃げるように腰を動かすが後ろには臨也の体がぴったりとくっついていて逃げ場を無くす。
それを好機と言わんばかりに、臨也の手が器用にベルトを緩めスラックスの前を寛げてしまう。
そしてそこから下着の中に手を差し入れ、少し硬くなった静雄のペニスを掴み揉んでやれば鋭く息を飲む音が聞こえ先端にじわりと体液が滲む。

「はは、勃ってきてるね。」
溢れ出た先走りを塗り込むように、先端を親指の腹で撫で回す。
ビクビクと脈打つそこは更に硬度を増して、臨也の手を透明な蜜で濡らしていた。

「あ、はぁ…!」
狭い布の中で窮屈そうにしているペニスを下着の中から取り出して、わざと淫猥な音を響かせながら緩やかに扱き上げてやると静雄は堪え切れなくなったのか頬を壁に押し付けて喘いでいる。
快楽に溺れ始めたその顔は真っ赤に染まり、目元は涙で濡れていて臨也はごくりと喉を鳴らす。

体の中心が熱くて仕方ない。
予想以上に興奮しているらしい自分に苦笑しながら、静雄のスラックスと下着を足元に落とし腰を抱き寄せる。

「な、何するんだよ…っ。」
左手はペニスに添えたままで右手を尻に廻しいやらしく触ってみせると、静雄は困惑した表情で臨也を振り返る。
そんな問いなどお構い無しに、右手の中指で先程からだらだらと滴る先走りを掬い取り、それをアナルへと塗り付けた。
最初は入口をなぞるだけにして、それから指先で突付く。

「あ、やだ…っんう…!」
ぐ、と軽く力を込めても指先すら拒むアナルに小さく舌打ちして、嫌だ嫌だと先刻から煩い静雄の咥内に人差し指と中指を突っ込み唾液を絡ませる。
存分に唾液で濡らした中指をまたアナルに宛がい、ゆっくりと埋め込んでいく。
ひっ、と息を飲み硬直する静雄を宥めるように左手でペニスを撫でれば、快感から体の力は抜けたらしく中指を根元まで飲み込ませる事ができた。

静雄の内は熱く狭い。
臨也の細い中指だけでもいっぱいいっぱいらしい。
苦しそうに息を荒げる静雄の汗と涙で濡れた頬に軽く口づけ、内の指をゆるりと動かす。

「ん、っ。」
掻き混ぜるようにして内壁を擦りつつ、指を抜き差しする。
潤む瞳を伏せ違和感に耐えている姿は酷く嗜虐心を煽るが、暗い欲望を何とか押さえ込んで丹念に後孔を解していく。
人差し指までも埋め込んで、締め付けてくるアナルの内で二本の指をばらばらに動かしていく。

「っ…そろそろ、いいかな。」
誰に聞くでもなく呟いて指を引き抜く。
己のベルトを外しズボンを寛げ、下着の中から反り勃つペニスを取り出し静雄のひくつくアナルにぴたりと宛がった。

「ぁ、嘘…やだ、いざ、やぁ…!」熱いものがぐっと押し付けられて静雄は首を緩く横に振りながら、臨也の名を切なげに呼び制止する。
だが、その行為は臨也の理性を崩れさせた。
ごくりと唾を飲み込み、腰を掴んで脈打つペニスを狭いアナルに押し込んでいく。

「うあっ…は、あぁ!」
漸く根元まで埋め込ませ、一度動きを止める。
初めて異物を受け入れたそこはぎちぎちと臨也を締め付け、射精感に奥歯を噛む。
どうにか快感をやり過ごすと、詰めていた息を吐き出して苦しそうに喘ぐ静雄の背中に頭を預ける。
痛みに震えている体に両手を廻し、労るように抱き締めた。

「辛いよね、でも動くよ…?」
そう言うや否や、静雄の萎えかけたペニスに触れながらゆっくりとではあるが腰を動かす。
先端が抜けてしまいそうな程に引き抜いてから、また最奥を貫くように挿入する。
何度もそうやって静雄の内を蹂躙した。

「んっ、あ、ぁ…!」
ある一点を掠めた時、静雄の口から明らかに快楽に濡れた声が漏れて臨也は安堵したように口元を緩める。

「ここ、気持ちいいんだ…っ。」
今度はそこばかりを執拗に攻め立てていくと、静雄のペニスもまた勃ち上がり始める。
喘ぎ声に甘さが混じり出し、快楽に蕩けた表情が見えて臨也は一層の興奮を覚えた。
先走りを潤滑油代わりにしてぐちゅぐちゅと抜き差ししながら、静雄の張り詰めたペニスをゆるゆると扱けば静雄自ら腰を揺らし始める。

「いざ、いざやぁ…!も、おれ、イくぅ…っ。」
知らぬ内に激しく腰を動かしていたらしく、静雄が切なく限界を訴える声に一旦動きを止めてやる。
手を添えていたペニスからは先走りが溢れ、今にも爆ぜてしまいそうだった。

「いいよ。俺に犯されて、イっちゃいなよ…。」
声を潜めて、意地悪く耳元で囁くと面白いくらいに顔が赤くなったのが解る。
小さく喉奥で笑って、止めていた律動を再開させた。
絡み付いてくる内壁を強引に割り開いて最奥を穿つ。

「ひ、あっ…イ、くぅ…っ!」
びくりと体が痙攣し、先端を覆う臨也の手に白濁が吐き出される。
きゅう、と強く後孔が締まり、臨也も息を詰めて静雄の内に欲望を注いだ。

「は、最高…っ。」
あまりの絶頂感に思わず本音が零れ内心で焦る。
しかし、静雄の意識は遠くにあるらしく聞こえていないようだった。
ずるりとペニスを引き抜いたアナルから、臨也の吐き出した精液が溢れ太股を伝う。
その感覚に小さく体を震わせ、静雄は甘い吐息を零す。
体の力が抜けたのか壁に背を預ける座り込んだ静雄の前に臨也も屈んだ。

「シズちゃん?」
顔は赤いまま、余韻に浸るように瞼を閉じている静雄の名を呼ぶと、気怠げに顔が上げられる。
静雄の視線がこちらに向けられているのを確認して、手に吐き出された静雄の精液を舌で舐め取ってみせた。

「んな…!」
赤かった顔を更に真っ赤にさせて目を見開き、びっくりしすぎて言葉が出ないらしい。
それが可笑しくて、くすくすと笑う。

「さぁて、これでシズちゃんは俺のものになったよ。これからもよろしくね?」
目を細めニヤリと口元を歪めて、残酷に言い放つと臨也は立ち上がる。

「じゃ、俺は帰るから。変なヤツに襲われない内にシズちゃんも帰りなよ。」
ひらひらと軽く手を振って、臨也は去っていく。
それを何処か遠い目で見送りながら、自嘲するような笑いが漏れた。

「何なんだよ…。優しく、すんなよ…。」
何故か急に哀しい気持ちになり、顔を歪ませる。

臨也が何をしたいのか静雄には理解できなかった、否、正直に言えば理解したくなかった。

家に帰らねば、と立ち上がろうとするが体に力が入らなくて舌打ちする。
それでも無理矢理に体を引きずって、静雄もその場を後にした。



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