口付けは甘い味





臨也の唇に食まれた一欠片の板チョコが、隣に座る静雄に向かって差し出される。
ん、と促すように発された声に、静雄は少し逡巡してから顔を赤らめてチョコに噛み付いた。

これはバレンタインデーの時に始まった、セックスの時の合図だ。

昔から、チョコには媚薬に似た成分が含まれていると言われているのだが、口移しをする事によって更に高い効果を得る。
バレンタインデーに静雄へとプレゼントしたチョコを静雄の熱い口内から奪い取った後、艶かしく笑んだ臨也が言った。

それからというもの、元々甘いものが好きな静雄を雰囲気良く誘う為に臨也が用いるようになったのだ。

互いの唇に挟まれたチョコが臨也の舌とともに静雄の口の中に入る。
溶け始めたチョコの甘い味と臨也の存外に熱い舌を口内で感じて、静雄は小さく体を震わせた。

「ふぅ…、んっ。」
逃げられないようにと頭を両手でがっちりと固定され、息をつく暇すらない程の激しいキスに静雄は臨也の肩に手を伸ばして縋る。

「っ…は、…シズちゃん。」
ちゅ、と小さなリップ音を立てて離れた唇が、チョコのような甘い声で静雄の名を囁く。
先程のキスですっかり蕩けてしまっている静雄は潤んだ瞳を臨也に向けてゆっくりと頷いてみせた。

僅かに残った理性の所為か俯いてしまった静雄の肩をそっと押してベッドに横たわらせる。


この体がチョコよりも甘く美味しい事を知っている臨也は、見せつけるように舌舐めずりしてもう一度静雄に口づけた。









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