ささやかな幸せ





仕事の合間に公園のベンチで休憩するのが、二人の最近の日課だ。

「トムさん、コーヒーどうぞ。」
ここに着いてからすぐ、静雄は近くにある自販機へ飲み物を買いに行っていた。
一つは静雄が飲む甘いカフェオレ、もう一つはトムが好むブラックコーヒー。
暦の上では既に春だと言うのにまだ少し肌寒く感じるため、温かい方を選んだ。

「おう、サンキュー。」
差し出された缶を受け取り、冷えていた手を温めるように握って隣に腰掛ける静雄をちらりと見る。
静雄も手が寒いのだろうか、両手で缶を持ちカフェオレを飲んでいた。

(か、可愛い…!)
トムは内心でそう叫び、我を忘れて静雄を見つめ続ける。
その熱い視線に気付いた静雄が、恥ずかしさから頬を僅かに赤く染めて困ったような顔でトムを見る。

「…トムさん?飲まないンすか?」
「お、おう。」
静雄の困惑が滲む声音で我に返ったトムは、慌ててプルタブを開けてから一気にコーヒーを胃に流し込んだ。
それを見て、静雄は小さく笑いを零しカフェオレを飲み干す。

「温まりましたね。」
「ん、もうちょっとしたら仕事に戻るかー。」
体の内側がじんわりと熱くなるのを感じながら、二人は目を合わせて笑い合った。









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