sweet time





「いただきます。」
バーテン服の男が、律儀に手を合わせてから目の前のチョコパフェを食べ始めた。

その様子を頬杖をつきながら見ている男・六条千景は緩む口元を隠す事もせずに、ただただパフェを頬張る静雄から目を離さずにいた。

「静雄、パフェ美味しいか?」

「ん。」

可愛い。今まで色んな女の子と付き合ってきたが、こんなに可愛い人は初めてだ。

池袋最強と言われているのに、喧嘩が恐ろしく強いのに、パフェに夢中になっている姿はそれを微塵も感じさせない。

「…何だよ、食べたいのか?」
見つめすぎていたせいか、静雄がチラリとこちらに視線を寄越し尋ねる。

「いや、静雄は可愛いなあってぐは!」
本当の事を言っただけなのに、加減はされていたのだろうが鼻が潰れたかと思う程のパンチが飛んできて、痛みに顔を押さえながら机に突っ伏した。

「テメーが変な事言うからだぞ。」
しかめた顔を赤くして拗ねたように言いながら、静雄は千景を睨みつけた。
痛む鼻を摩りつつ千景は眉を八の字にして笑ってみせる。

「ごめん。でも静雄は可愛くて格好よくて強くて…最高だ。」
また更に顔を赤くして、静雄が小さく震え出す。
よく見れば瞳には涙が滲んでいて、千景は焦った。
好きな人を泣かせるなんて、男として最低だ。

「し、静雄…?」
恐る恐る名前を呼ぶと、また睨まれる。
あぁ、彼は照れているのだ。
そう思うと同時に愛しさが込み上げてきて、千景の口元がだらしなく緩んだ。

「…変な顔するな。」
小さな溜息が吐き出され、気を取り直したのか静雄は再びパフェを食べ始める。

あのパフェを食べ終えたら、もうデートは終わり。
俺は埼玉に帰らなければいけない。
はぁ、と溜息が零れた。

そんな千景の姿を見て静雄は暫し考え込んだ後、机の上のベルを鳴らして店員を呼び付ける。

「プリンパフェ、一つ。」
手短に告げられた注文を聞いて、千景が驚きに目を丸くする。
静雄はちらっと千景を見た後に視線を逸らし、恥ずかしいのか少し残っていたチョコパフェを綺麗に平らげた。

「もう一個パフェ食うから、待ってろよ。」
まるで千景の心の中を読んだかのような静雄の行動に、千景は喜びを隠さず満面の笑みを浮かべて大きく頷いてみせた。










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