たまには良いでしょ?





休みの日は平穏だ。
家の中にいれば、誰も静雄を怒らせない。
でも、常に一緒にいる上司に会えないのは少し寂しい。

…何を考えてるんだか。

頭の中で自嘲して、溜め息をつく。

先程抜け出したばかりのベッドに逆戻りし、もそもそと潜り込む。
今日は一日だらだらと過ごす、そう決めた。

決めた、筈だった。


「いきなり来て悪かったな。これは土産のプリンだ。」
電話があった30分後に、トムが静雄の部屋に来た。
室内に上がり込んだトムはコンビニの袋を静雄に渡す。
トムの言う通り、中にはプリンが入っていて自然に口元が緩む。

「ありがとうございます。後で食いますね。」
冷蔵庫にプリンをしまってから、トムが座るソファに静雄も腰掛ける。
何だか落ち着かなくて、そっとトムを盗み見る。
煙草を吸いながら、男物のファッション雑誌を読んでいるらしく静雄がじっと見つめているのに気付かないのをいいことに、トムさん観察をする事にした。


今日はいつものスーツとは違って、濃い赤のカットソーの上に黒と白のスプライト柄のシャツを羽織り、黒っぽいデニムを合わせている。
対する自分は、パジャマ代わりにしている白のTシャツに黒のハーフパンツ姿だ。
まぁ、着替えたとしてもトムには敵う気がしないのだが。

やはりこういう雑誌を読むのが大事なんだろう。
ふと雑誌に目をやると、自然と視界に映るトムの綺麗な手。
思わずドキリとして目を逸らした。


「静雄は、こういう恰好が似合いそうだな。」
その言葉に改めてトムを見てから近寄り、指を差された雑誌に目を落とす。
似合うかどうかはわからなかったが、さすがはトムさんカッコイイ!と言いたくなるような恰好だった。

「そうスか?トムさんの方が似合いそ…っん。」
言いながら顔を上げれば、重ねられる唇。
ペロリと舐められ、自然に口が小さく開く。
その隙間からトムの舌が侵入し、ついでに後頭部をしっかりと手で押さえられて好き勝手に貪られる。
きつく目を閉じながらも、静雄も気分が高まり自ら舌を絡め合わせた。

「ん、ふ…ぅ。」
口端から滴る唾液を舐め取られ離れる気配に薄く目を開けると、トムが些か乱暴に頭を撫でてきた。

「お前なあ、見つめすぎ。そしてエロすぎ。トムさん大人だけど、さすがに我慢できないぞ。」
肩に腕が回ったかと思うと、次の瞬間には抱き寄せられていて静雄の顔は真っ赤になる。

やはり、この人には色んな意味で敵わない。

その事実が悔しくて、少しでも動揺させたくて首筋に腕を絡ませ頬に口づける。

「…トムさん、好き。」
おまけに普段なら絶対に言わない台詞を耳元で小さく囁いてみれば、視界が反転、トムの顔と天井が見えて押し倒されたと知る。

「お前が誘ったんだからな。覚悟しろよ、静雄。」
余裕の無い表情を見れたのは嬉しいが、代償が大きすぎたと後悔する静雄なのでした。







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