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▼ 星に祈る

こうして夜空を見上げている人は何人くらいいるんだろう。
そんなことを考えながら、私は真島さんと煌々と輝いている月が地球の影に隠れていく天体ショーをミレニアムタワーの屋上から眺めている。

「不思議なもんやなぁ」
「本当に」
「なまえはホンマこういうの好きやなぁ。宇宙飛行士にでもなりたかったんか?」

さすがにそれはない。ふるふると首を横に振って真島さんの腕にくっつく。
たしかに火星が地球に最接近した時も、国際宇宙ステーションが上空を通過した時も、真島さんと一緒にそれを見ていたからそう思われても仕方がない。

「こういうのって地球の存在を実感できるから好きなんです」
「あぁ?」
「星の数ってどれくらいあると思いますか?」
「さぁな。考えたことも無いわ」

太陽系の星々が入っている銀河系で約二千億個、時々地球に接近しては離れていく星が毎年約二十個ほどあるらしいから、きっと兆を超える。そして銀河系は他にもたくさんあるから……。
途中まで説明したが、急に夜風が冷たくなってきた。
身体が震えて真島さんの腕にすり寄ると、それを察したのか真島さんが私の腰に腕を回して自身の身体と私の身体をぴったり密着させた。

「想像できへんほどスゴい数やな」
「はい。だから、その数ある星の中の地球に私が存在してるのって奇跡だなと思えるんです」
「せやったら俺も奇跡っちゅうことやな」
「そうです。そして、こうして身体を温め合いながら真島さんと一緒に月を見てるってことも……奇跡、ですよね?」
「随分とロマンチックやないか」

月から目線を外して真島さんを見上げると、すでに真島さんがこちらを見ていて、嬉しそうに私の頭を優しく撫でた。

「ほんならなまえが入れたコーヒーが旨いのも、俺が買うてきた下着がバッチリなまえに似合うのも奇跡やなぁ〜」
「そ、それとこれとはまた別な話で」
「一緒やろが」

いつものようにヒヒヒッと楽しそうに真島さんが笑う。
こんなくだらない話も、真島さんの素敵な笑顔も、きっと奇跡なんだろうな。

「お! 完全に隠れてしもた」
「神秘的ですね。月に手は届かないけど……、真島さんには届いて良かった」
「嬉しいこと言うてくれるやんか。ほな、お月さんがかくれんぼしとる間にキスしようや」
「すぐには出てきませんよ?」
「知っとる。せやからすんねや」

どうか、ずっとこの幸せな時間が続きますように。

月に行けなくても、私は遥か彼方にある月や星に、真島さんとの未来を願えればそれでいい。
見つめ合って微笑んで、私は真島さんとキスをする。


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