twitter | ナノ


▼ いつも想っているよ

思うように仕事が捗らなくて、フラストレーションが溜まりに溜まっている。
あぁ、と大きなため息をつきながら両腕を投げ出して背もたれに背中を預ければ、キャスター付きのオフィスチェアは惰性でデスクから逃れるようにガラガラと安い音を立てながら後ろに下がる。
普段見ることの無い天井を見上げながら思い浮かぶのは愛する彼のことだ。

「電話、しちゃおうかな」

真面目に残業しているのは私だけだし、と鞄からスマホを取り出して電話ボタンを押して履歴を表示させると、そこは見事に "真島さん" の名前が連なっている。
もちろん友人から掛かってくることもあるし、何処かのお店を予約するのに電話をしたりすることもあるが、真島さんの名前で埋め尽くしたいという私の自己満足で、履歴にあるのは彼の名前だけだ。
表示されている名前をタップすればすぐに電話は繋がり、耳に届く真島さんの声。

「おう。お前から電話なんて珍しいやないか」
「声、聞きたくなっちゃって」
「まだ仕事終わらんのか?」
「うん……、もう少しかかりそうなの。ごめんね」

本来なら女が質問して男が答える場面だと思う。
『仕事と私、どっちが大切なの?』なんてよく聞くセリフだけど、もちろん愛おしい人が大事。だけど仕事も投げ出せない。
本当は真島さんもそんな思いを抱いているのかなと電話の向こう側を探ってみようとしたが、声色だけではそういうものは量れないし、そういうのを隠すのが上手な真島さんだから、思っていたとしても表には出さないだろう。

「それにしても、電話に出るの速かったね」
「せやろ? ……なぁ、俺、今何処におると思う?」

ヒヒヒ、と得意気に笑った真島さんの後ろで車が走っている音が聞こえる。
耳を澄ましてよくよく聞いてみるといろんな人の話し声、そして聞き慣れたお店の音楽――。

「っ!」

質問の意味を察して通話状態のままスマホを机に放り投げ、慌てて会社を出てみれば、コンビニの袋をぶら下げた真島さんがしてやったりという表情で立っていた。

「疲れた顔して。ほれ、差し入れや」
「どうして……」
「どうしてって、そりゃなまえに会いたかったからや」

改めて「ほれ」と差し出されたビニール袋を無視して、私は真島さんの胸に飛び込んだ。


◆拍手する◆


[ ←back ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -