mamёm | ナノ


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カチャカチャとホイップを泡立てる音がキッチンに響いている。
初めて入る男の部屋に落ち着かずにいると、「緊張すんなや」と真島さんに笑われた。
コック服姿は見慣れているが私服姿を見るのは初めてで、真島さんの部屋にいるというだけでも緊張するのに、さらにその姿が緊張を増幅している。

「こう動かしたほうがええで」
「……っ」

真島さんが背後からハンドミキサーを持っている私の手を握ってボールの中のクリームをかき混ぜる。
心臓がバクバクとうるさいくらいに大きな音を立てていて、正直クリームどころではないが……

(私は美味しいホイップクリームの作り方を教えてもらってるんだ!)

自分に言い聞かせて真島さんではなくホイップクリームに神経を集中する。

「あ、あの、やっぱり泡立て器で混ぜたほうがいいんですか?」
「俺はこっちのほうが慣れとるけどハンドミキサーで十分やで。大切なのは混ぜ過ぎないことやな」

私から離れた真島さんは氷水に浮かべたボールを器用に回しながらクリームを泡立て器でかき混ぜていく。
ホッとしたのも束の間、緊張でしっかり取り付けていなかったのか突然ビーターが外れ、辺り一面ホイップクリームまみれになってしまった。

「大丈夫か? 怪我しとらんか?」
「す、すいません! ちゃんと私がビーター付けてなかったみたいで!」
「ヒヒヒッ! なまえちゃんはドジやのぅ。早よエプロン脱ぎ」

すぐにエプロンを脱いで、真島さんが広げてくれているビニール袋に入れる。
よく見れば真島さんの服や床にもクリームが飛び散ってしまっていて、ハンカチで拭こうとバッグを取りに踵を返した時、真島さんに腕を掴まれた。

「そんなもん放っておいてええ」
「でも」
「服は脱げばええ」
「え、あ……」
「なまえちゃん、顔にもついとるで」

真島さんの手が伸びてきて反射的に目を瞑る。
指で掬い取られるものだと思っていたのにその手は私の後頭部へ。
驚いて目を開けば真島さんの舌が私の頬に付いたクリームをペロリと舐めた。

「ま、まじ、ま、さん」
「ずっと、こうしたかったんや」

髪や額、鼻、首に付いたクリームを、真島さんの唇と舌が生き物のように皮膚を這って舐め取っていく。
慌てて大きな身体を押し戻そうとしても、私の身体を抱き寄せている男の腕はびくともしない。

「わ、私っ」
「嫌いか? 俺のこと」
「……そ、それは」
「俺はずっと好きやったで」

そう告げられてしまえば何も抵抗できない。
私だって真島さんが好きだ。だからこうして家に来たのだから。
恐る恐る顔を上げて自らの唇をそっと差し出すと、ほんの少しの隙間から真島さんの舌がぬるりと入ってきた。
口内で蠢く舌に必死に応えようとすると、柔らかな感触を楽しむかのように私の舌先を甘噛みしたり吸ったりしながらねっとりと舌と舌を絡める。その唾液を混ぜ合わせる音が脳内に響いて、確実に私の理性を奪っていった。

「んっ、ふぁ」
「なまえちゃんも、食べたいやろ?」

唇を解放した真島さんは人差し指をボールに突っ込んで、クリームをたっぷりつけると私の口の中へ指を差し込んだ。
指の腹で舌をなぞるようにしながら出したり入れたりを繰り返す。
甘いクリームの味が口いっぱいに広がり、舌は捕食しようと右へ左へと指を追って、必然的に真島さんの指を舐め回すような動きをしてしまう。
するりと抜かれた指にはべっとりと白濁の唾液がついていて、クリームの重みでとろりと糸を引きながら床に落ちた。
恥ずかしさに涙が薄っすら浮かんだ目で真島さんを見れば、明らかに欲情している表情で見つめ返された。

「……なまえちゃん、エッチ過ぎやで……。あかん、もう我慢できひん!」
「っ!」

ふわりと身体が浮き、肩に担がれるようにして連れて来られたのは真島さんの寝室。
ベッドの上に私を下ろすと、堪えきれない欲望を剥き出しにして服を脱ぎ捨てた。
私に覆い被さり口づけながら真島さんの手はブラウスの裾をたくし上げ、誰にも触らせたことのない胸の膨らみへ。
柔らかさを堪能するように揉みしだいている真島さんは、私の首筋に舌を這わせながら荒い息を吐いている。
ブラジャーのホックも外され、そのまま上へ押し上げられると外気に肌が粟立った。

「もうここ、めっちゃ勃っとるで」

胸の先端を指が上下に弾くたび、それに反応してピクンと身体が跳ね上がり吐息が漏れる。

「気持ちええんか? もっと気持ち良くしたるからな」

さっきまで私の口内で蠢いていた舌がチロチロと胸の先端を舐め上げ、吸ったり噛んだり音を立てながら左右の先端を貪っている。
甘い声を上げればさらに虐められて、息苦しさすら覚える快感に真島さんの頭を抱え込んだ。
胸の先端を散々弄っていた指は肌をなぞるように下腹部へと移動し、既に太腿まで捲れたスカートを腰まで捲り上げて、器用にストッキングと下着を引き下ろした。

「ま、真島さんっ」
「なんや?」
「服、脱がせて」
「……駄目や。なまえちゃんの私服、可愛くてたまらんからそのまま、な」

真島さんは私の反応を確かめるように爪で肉芽を優しく引っ掻いた。
止まらない快感に溢れ続ける粘液を指の腹に塗り付けるようにして、肉芽を擦られればビクビクと身体が震えた。

「感じるか? 気持ちええやろ?」

身体の位置を変えた真島さんは、私の太腿を抱えて肉芽に舌を伸ばす。

「だ、ダメッ!」
「キレイやで。真っ赤に膨らんで美味そうや」

じゅるり、と音を立てて肉芽を口に含んだ真島さんは容赦なく舌で責め立てる。
舌の動きに腰が浮いてしまい、そんな私を楽しむようにぴちゃぴちゃと感じる部分を舐め上げながら中にゆっくりと指を挿入してきた。

「ひッ」
「どこが気持ちええ?」

指は内壁をぐちゅぐちゅとかき回す。
自分でもわかるくらいに中からじんと熱が込み上げ、指の動きを捉えようと無意識に腰がゆらゆらと動く。

「腰動いとるで。もっと感じたいんか?」
「やッ、ちが」
「ここがええんやろ?」
「んぁっ、い、いやッ」
「一回イかせたる」

一気に動きを速めた指は激しく感じる部分を執拗に擦りつける。

「あぁぁッ!」
「なまえちゃん、俺の顔見て。イくとこ見せてや」

目を細めて視姦するような隻眼を見つめながらイった。
真島さんは視線を外すことなく身に着けていたもの全てを見せつけるように脱いで、反り返った肉棒に避妊具を装着した。
他にもこうしている女がいるのかと思ったが、「ミルちゃん専用やで」と言われて今日のために買ったことを知った。

「今度は、俺の番な」

肉芽に十分に硬くなった肉棒を擦り付けてから入口にあてがい、ゆっくり腰を沈めて内壁を押し広げる。

「んんっ」
「ぁ……キツ」

ゆっくり腰が動き始めると、最初は異物感しかなかったのが少しずつ快感へと変わっていき、ズン、ズンと奥に押し進められるたび、私が上げる嬌声が真島さんの支配欲と興奮を高めて突き上げる動きが速くなってくる。

「なまえちゃんは激しいのが好きなんか?」
「ちが、ンッ! イヤぁ」
「感じとるくせに。イヤ言うても止めへんで」

身体を揺らすたびに胸を隠すブラウスが邪魔になったのか、ボタンを外して私の胸を露にすると、揺れるそれを揉みながら感じているのであろう快感に天を仰いでいる。

「ぁ、はぁ……、なまえちゃんのナカ、めちゃめちゃ熱いで」
「あぁッ、ま、またイッちゃ……っ」

その言葉に激しく腰を突き動かされ、私の内壁はヒクヒクと痙攣して肉棒を締め付けた。

「なまえちゃんがイくとこ、可愛過ぎやで」
「……っ」
「ほな……俺も、ええか?」

一旦動きを止めていた真島さんは再びゆっくりと腰を動かし始め、徐々にそのスピードを上げていくと、中から溢れる粘液がぐちゃりぐちゃりと卑猥な音を立てた。

「んぁ、あっ」
「その声、もっと俺に、聞かせてくれや」

少し苦しそうになってきた真島さんの声に煽られて、抑えることもせずにただただ喘ぎ続ける。
服を中途半端に脱がされ乱れている私の姿は、真島さんの目には淫らに映っていることだろう。

「ホンマは、後ろからも、したいんやけどっ……、今は、なまえちゃんの、エロい顔見ながら、イきたい」

はぁはぁと真島さんの息遣いが荒くなり、激しく腰を打ち付けて内壁を肉棒が擦り、かき回す。
私の両腕を掴んで最奥を突き上げている真島さんを下から見つめれば、上から上気した顔の真島さんが獲物を捕らえたようなギラついた目で私を見下ろす。

「なまえちゃん」

真島さんは身を屈めて私の後頭部に手を回すと、鼻先が触れる距離で一層腰の動きを速めながら私に問う。

「俺のことっ、好きか?」
「ん、あぁッ、す、きっ、ああぁ」
「俺も、好きや、でっ」

私を見つめていた真島さんの目が強く閉じられ小さく呻くと、何度か大きく奥を突いて精は吐き出された。





新しい月になった。

「なまえ! ええ話が来たんやぁ!」
「なんですか?」
「『Candy Dragon』っちゅう執事喫茶からな、俺のスイーツ扱いたい言うて取引が来たんや」
「執事喫茶?」
「さすが神室町には知らん世界がぎょうさんあるんやなぁ。なんや、女は欲求不満なんか?」
「私に聞かれても」
「せやな。なまえは俺が可愛がっとるからなぁ」

私はホテルのレストランを辞めて神室町へ。
そして真島さんと一緒に新たにオープンするお店で新たな一歩を歩んでいる。

「じゃあ、あの新作喜んでもらえそうですね!」
「いや、あれは出さん」
「どうして?」
「あれはなまえのために作ったんや。他のヤツには食わせんで」
「やっぱり、私のために作ったんだ」
「そうや。邪魔なヤツら追っ払うのに大変やったんやからな!」

これからどんな人生が待ってるんだろう。
ただひとつ、わかっていることがあるとしたら……。

「真島さん」
「ん?」
「ずっと、大好きです」


written by ёm
title by 夢見月


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