▼ やさしいサンタクロース
クリスマスケーキを販売するバイトもこれを手渡せば終了。
最後のお客様はヤクザさんだった。
恐る恐るお金を受け取り、商品を手渡すと「おおきに」と満面の笑み。
「ほな、コレ俺からや」
男は、たった今私から購入したケーキを私にと差し出した。
「えっと、あの……」
「ご苦労さんやったな」
おまけや、と半ば強引に手渡された缶コーヒーは温かい。
「浮かれとる連中相手に頑張って働いたんや。そんくらいのご褒美があってもええやろ?」
「お客様!」
「俺は、真島や」
「ま、真島さん、ありがとうございますっ!」
真島さんは背中を向けたまま、ひらひらと手を振り去って行った。
「また、来年のクリスマスにな」
私のところにやってきたのは、蛇柄ジャケットのサンタクロース。