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▼ 悪夢に嫉妬する

高速道路を1台のトラックが走っている。
それを運転しているのは紛れもない吾朗さんだ。
吾朗さんは途中でトラックを止め、誰かを助手席へと乗せた。
キラキラしているボディコンを着たナイスバディの白人女性。

「ええ乳しとるのぅ〜!」

吾朗さんは女性の胸元に手を伸ばして胸の飾りを弄りだす。
私はテレビを見ているような感じでその一部始終を見ている。
女性もまんざらではない様子で、顔を赤くして同じように吾朗さんの胸に手を伸ばし、お返しとばかりに彼の胸の飾りを弄り始めて──

「っ!」

カチ、カチ、と聞こえる時計の秒針。
隣を見れば吾朗さんがグーグーと気持ちよさそうなイビキをかきながら眠っている。

「……夢、か」

高速道路に人がいること自体おかしいし、吾朗さんが運転していたトラックはなぜか左ハンドル。
出てきたのが白人女性なのも謎の海外仕様で、夢であることに間違いないのだが。
リアルであって欲しくないところが妙にリアルで。

「なーにが『ええ乳しとるのぅ〜!』よっ」

二度寝する気にはなれず、洗面所に行っていつもはぬるま湯のところを冷水でバシャバシャと勢いよく顔を洗った。
腹立たしいのは出てきた女が抵抗せずに胸を触らせて、自ら吾朗さんの胸に手を伸ばしたことだ。

「嬉しそうな顔して……何なのよ、あの女!」

夢の種類にも許せるものと許せないものがある。
今回見たのはとてもじゃないが許せる夢ではない。
なぜこんな夢を見てしまったのかとスマホで夢占いのサイトを見る。

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トラック:心の中の負担を示す。重荷に感じること、圧迫感のようなものがあるのでは?

彼氏:彼氏への想いがストレートに現れることが多い。彼氏に対するあなたの本音、彼氏との関係の深さなどを知ることができる。

浮気される:相手に対して不信感を抱いていたり、愛されていることに自信を失っているのかも。

外国人:自分とは異なる環境にいる人、価値観が異なる人が現れることを暗示。

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とりあえず……いい夢ではなさそう。
朝から溜め息をついてキッチンに向かい、朝食の準備をする。
あのイチャイチャしている光景が焼き付いて離れない。

「おはようさん。今日はやけに起きるの早ないかぁ?」

起きてきた吾朗さんがいつものように背後から抱き着いて、私の頬やら首やらに目覚めのキスをする。

「……トースト焼いてるから」
「なんや、何怒ってんねん」

私の顔を覗き込んできた吾朗さん。
その顔を見たらあの『ええ乳しとるのぅ〜!』の顔が甦って怒りが込み上げてきた。

「別に怒ってないから」
「怒っとるやろ」
「怒ってない!」
「……あー、わかったで。おかしな夢見たんとちゃうか?」

せやろ? と笑いながらまた顔を覗き込まれて一気に感情が溢れてしまった。

「私よりナイスバディな知らないイイ女とあなたが乳繰り合ってる夢を見て、怒らないでいられると思う?!」
「……夢やろ?」
「夢だって嫌なものは嫌!」

不安なのだ。
女性に優しくて、話術もあって、容姿端麗なあなたに、私よりも魅力的な女性たちが寄ってくるのを知っているから。

ひょっとしたら私の知らないどこかで知らない女性と……。
何か私に落ち度があれば、すぐに違う女性のところへ行ってしまうのでは……。
だから私はあなたに嫌われないようにしないといけない。
だからあなたが求める女性にならなければならない。
だからあなたに満足してもらえる完璧な女性にならなければ。
だから私は──。

「だから、私は、」

気づけばうわ言のように何度もそう呟いていた。
肩を落とし、項垂れて、ぽたりと涙が床に落ちていくのが見えた。

「せやな。イヤな夢やったな……俺が悪かった」

吾朗さんに優しく抱き締められて、私はようやく現実に戻ってこれた。
どんな内容だったのかと聞かれ、思い切って打ち明ける。

「はぁ? なんで俺が外国人の女と乳繰り合わなあかんねん。しかもそのセリフ、この前なまえに言うたやつやで」
「えっ?!」


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