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▼ To be fry...

名も知らない浜辺で。
誰もいない夜の浜辺で。
好きな人とたった二人で。

ビーチサンダルを脱いで、さらりとした砂の感触を楽しむ。
放り投げたスマホからはお気に入りのBGM。
手に持った花火の火が潮風に乗って散る。

「キャーッ、花火は人に向けちゃダメなんですよっ」
「ヒヒッ! さっきなまえもやったやろ。仕返しやぁっ!」

大人げなく花火を振り回しながら真島さんと私は追いかけ合う。

「ほれ、花火」

次から次へと真島さんは花火に火をつける。
私はそれを受け取り、BEATに乗って歌って踊る。

「♪To be fly To be fly To be fly To be fly...」

花火を持った両手を広げてクルクル回れば、真島さんは私の背中に光の羽が生えたように見えると言った。

「どこに飛んでいくんや?」
「真島さんがいる所ならどこへでも……あっ」
「っ!」

ジューッという音がした。
足がもつれて見事に私は海の中へ。
そして私を支えようとした真島さんも道連れに。

「……なまえのせいでびしょ濡れや」
「火照った身体にちょうどいいじゃないですか」

人工的に作られた光は消えた。
波の音、星空の絨毯、月光のカーテン。
全部私たちだけのもの。

「ホンマに飛んでいけそうやな……なまえとなら」
「二人で一緒に飛んでいきましょうか」

濡れて身体に貼り付く服も、抱き合ってしまえば何も気にならない。
腰に回る腕、首に回す腕。
唇を重ねれば海の香り。
スマホはまだ陽気なBEATを刻んでいる。

「好きやで」
「私も好きよ」

深まる口づけ、高鳴る鼓動。
とある蒸し暑い夜の海の中で。

To be fly To be fly To be fly To be fly──


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