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次に真島さんが連れてきてくれたのはゲーセン。
あ、これ可愛い。
ゆるっとしたくまのぬいぐるみ。私が好きなキャラクターだ。

「なんや、これ流行ってるんか?」
「可愛いくないですか?癒されるんですよ。」

ほんなら、取ったるかと言って真島さんはお金を入れてクレーンを動かしている。
私はその様子を後ろから見る。
真島さんは慎重に横からの角度を見たりしてクレーンを調節している。

「取れそうですか?」
「建設でようクレーン使うからな、こんなん一緒やろ。」

いや、大きさ違いますけどと思いながらも下がっていったクレーンはくまを掴む。
ほら、掴まんかい!と言いながら真島さんは機械を叩いてる。

「叩くと警報機鳴りますよ!」
「お、ほら見てみ!」

そういってぬいぐるみはがっしりとホールドされてそのまま穴へすとん。
取れてるし!

「さすが、ゴロちゃんやで!一発で取るとかすごいやろ。」
「ありがとうございます。」

そういって渡されたくまは相当でかい。
これ持って歩くの恥ずかしいなぁと思いながらも純粋に嬉しい。
さっきまでの気持ちが少しだけ軽くなって純粋に楽しもうかなと思う自分がでてくる。

「ほんなら、次はこれやるで!」

そう言いながら、中に入る真島さん。
慣れた手つきで背景などを選んでいる。

「真島さん、プリクラとか取った事あるんですね。」
「そりゃ、あるやろ。」

そう話していると、真島さんはもっとこっち寄らな映らんやろと言っている。
いや、近いですから!と思いながらも腕を引かれてそのままぱしゃり。
私の顔は見事に変顏に。
真島さんは笑いながら私の変顏のものを選んでいる。
そして出来上がったものを渡される。
どれも私の顔は赤くなったり俯いていたりと見事にひどい。

「ほんなら次は何しよか?」

そう言いながらまた私の手を引く。
あ、ちょっと待ってくださいと言いながらも私の足は慣れないヒールで悲鳴を上げ始めていた。
そして離れる手。

「どないしたんや?」
「いや、大丈夫です。」

じんじんとする足。
少し休めば大丈夫だろうか。
そんな事を思っていると後ろから声がする。

「真島さん!」

声の主は前にみた真島さんと横に並んでいた女性。
真島さんはちょっと待っときと言って話している。

私といるより楽しそう。

そう思ってしまったら突然、私はこの場にいるのが嫌になって走り出していた。

◆◇◆

痛い。
何が痛いのか寧ろ分からない。
心なのか足なのか。
それが今まで嘘をつき続けていた罰なのか。
ぽつりぽつりと涙が溢れてくる。

なんで、私は可愛くないのだろう。
先ほどの女性の様に笑顔で素直になれないのだろう。
なんで嘘をついてしまったんだろう。

この足にできた赤い跡は自分がついた嘘の戒めなんだろう。
じんじんとしていた足を見ながらも涙は止まらない。

そしてカツカツと靴の音がする。

「待っときって言うたやろ、なんで先に行くねん。」
「すみません。」

私は俯いたまま泣いた顏を見られたくなくて顏を上げたくない。
真島さんはそのまま私の座っている横に腰かける。
そして私の足を見る。

「なんで言わんかってん。」
「…………。」

大人に見られたかった、可愛いと言われたかった、真島さんに釣り合う女になりたかった。
色々言いたくなるが、言葉にできない。
だって、だって、だって…。
言葉にならないものは涙になっておちる。
そして真島さんは溜息をひとつ。
きっと呆れているんだろう、こんな子供の様な私に。

「惚れた女に泣かれたら男はほんま無力やなぁ。」
「えっ…。」

そういって抱きすくめられる。
真島さんの胸元に顏が埋まり、真島さんは私の頭を撫でる。

どういう事?
私はどうしていいかわからない。
でも、ここで今、言わないと一生後悔するんじゃないか。
そんな予感がした。

「………私が、好きな人は真島さんなんです。」

聞こえるか聞こえないかくらいの声で私はそう言った。
真島さんは何でもっと早よ言わんのやと言いながらも抱きしめる力を強くした。
私はそっと腕を背中に回す。
こんなに暖かいんだ。そして素直になるって大事だということを噛み締めた。





――――――





「ほんなら、デートの続きするで。」
「まだ、足痛むんで今日は帰ってもいいですか?」
「何、言うとんねん。そんな足で歩かせる訳ないやろ。」

ひょいと私を抱え、まさにお姫様抱っこの状態。
恥ずかしすぎる!

「真島さん!降ろしください!恥ずかしいんで。」
「ええやろ。見せつけたったらええねん。」

真島さんは嬉しそうに鼻歌を歌いながら私を抱えて歩く。
果たして向かう場所とは?

「やっぱり、帰ります!」
「デートの仕上げはここやろ。」

降ろされたベッドの上で私は後ずさり。
そんな事、お構いなしに真島さんは私との距離を詰めて笑っている。

「デートの〆は名前やで。」

そう耳元で囁かれて甘いキスが落される。
真島さんとのデートはここから始まる。


***


linkさせていただいている『Endorphin』mame様からのご厚意でステキなお話をいただいちゃいました。ありがとうございます!

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