▼ 全部計画通り
小さい画面を前に深呼吸を一回。
上下に動く黒い線を見ながらリズムの調整。
−−−−ready−−−−
−−−−GO−−−−
瞬間現れるたくさんの〇をタイミングよくタップする。
大好きな曲のハードモード。
できれるだけいい点数を取りたい。
「なぁ、名前ちゃん。」
「真島さん、ちょっと今は・・・まって・・・ください。」
おっと、1ミス。
「・・・」
「・・・よし!!」
リザルトでこれまでで一番いい点数が表示される。
傍らに光るSの文字にニンマリと笑顔を禁じ得ない。
「真島さん!見てください!!」
この曲は真島さんも好きと言ってくれていたのでどや顔で報告する。
「おぉ、さっすが名前ちゃんやなぁ。」
そう言ってワシワシと髪がぐちゃぐちゃになるほど撫でられる。
「せやけど、せっかく二人でおるのにゲームに夢中にならんと構ってぇや。」
と、子供が駄々をこねるように口をとがらせる。
普段とかなりかけ離れているかわいい表情のギャップにきゅんとしながらも
「すみません。でも真島さんに一番に、すぐに、とれたての点数を目の前で見せたくて・・・」
と言い訳をする。
「う、そんなん言うても許したらんで!」
今度はそっぽを向いてしまった。
年齢を考えると苦笑してしまうが、そんなところもこの人らしいと「真島さん、」と名を呼びこちらに振り向かせる。
「これで許してください。」
とその尖らせたアヒルのような口にちゅっと軽いキスをする。
するとだんだんと横にゆるく広がってくる唇。
真島さんはそのままにやりと笑うや否や
「足りひん」
といきなり顎と腰をがっしりホールドされ深く口づけてきた。
それは甘く、しつこくねっとりと。
息は止めてはいないが、だんだん苦しくなりトントンと肩をたたく。
いつもならこれで放してくれるのに今日は知らんぷり。
口の中で縦横無尽に動き回る真島さんの長い舌に少しの喘ぎ声が漏れる。
だんだんと頭がぼぅっとしてきて、口に力が入らなくなりだらりと垂れる唾液が首まで伝ってきたころにようやく解放された。
はぁはぁと俯いて息をする私を片目に
「これで許したるわ」
と真島さんは満足そうにのたまった。
(でも、ごめんなさい。)
飲み物を取りに行こうと席を立つ真島さん。
その服の裾をつかんで
「足りないです」
と見上げながらつぶやいた。
右目が見開かれ大きな音を立てながらそののどぼとけが上下する。
さて、この後あなたはニヤリとしながらこういうのでしょう?
「ほなら、ベッドで続きしよか?」
行くで。と裾をつかんでいた手を取られ腰を抱かれる。
そのまま寝室へ直行コース。
ごめんね、真島さん。
全て計画通り
こうすれば貴方は私に構いたくなるでしょう?
――――――
さんざん名前を抱き潰したあと、お互い満足しあい、彼女は今俺の腕の中で静かに寝息をたてている。
可愛らしいおねだりを思い出しながら、彼女の髪を優しく撫でる。
「あないな事せんでもアマアマに構ったるのに・・・」
計画に乗っとった方が名前は素直になる。
「全部、お見通し。なんやで?」
掬いとった髪に口付けながら囁いた。
***
七篠権兵衛様のサイト『白紙の原稿用紙』の1000hit記念イベントにリクエストして、いただいた素敵なお話。ありがとうございました!