Story from music | ナノ


▼ You're my Happiness

キラキラ輝く大きなクリスマスツリーの下で、待ち人に思いを馳せた人々が集まっている。私もその中の一人だ。
彼氏、彼女、友達、家族……。ここにいる人たちは誰を待っているのだろう。
ひとつ言えることは、今この瞬間、私たち全員の気持ちが同じであるということ。
もうすぐ会える人のことを想い、それが今か今かと待ち侘びている。
心を躍らせ、どこから姿を現すかと辺りを見渡して、大切な人の姿を探す。
そして、一人、また一人と無事に出会えた人たちが、このクリスマスツリーを離れていき、その後ろ姿が羨ましい。
次は自分の番かと期待して、静かにその時を待つ。
待ち合わせの時間から1時間が過ぎた……。彼は来ない。
一人だけここに取り残されるような孤独感と不安が胸をよぎるが、それは杞憂である。

『遅くなるかもしれへん』

待っている最中に届いた短い一言のメールが、彼の忙しさを物語っている。
そんな中でも私のことを想い、気遣ってくれた優しさが嬉しい。
遅くなる、の言葉の先に、"遅くなってもなまえに会いたい" という込められた彼の気持ちを感じて、何時間だろうと私は彼を信じて待つ。
身に沁みる寒さで雪もちらついてきたというのに、不思議と寒くない。
強い眼差しで真っ直ぐ見続けていた交差点。その先に見慣れた黒い車が止まり、人が降りてくる。
ふわり、と心が浮かぶのを感じた。

「はぁ、はぁ、なまえ……、ホンマにすまん!」

走って来てくれた彼が、苦しそうに肩で息をしながら、手を合わせて私に頭を下げる。

「大丈夫です。待ってる時間も幸せでしたから」

そんな言葉を予想していなかった彼は、驚いて勢いよく顔を上げた。
こんなことで怒ったりしない。嫌いになんかならない。
彼に会ったら何と言おうか。この特別な日にどんな特別な言葉を伝えようか。
愛に溢れたこの場所で、ずっと考えていた。
ありふれた "好き" や "愛してる" でそのことを伝えたくない気がして……。

「真島さん」
「ん?」

どんなことがあっても、私は真島さんの隣にいます。
真島さんがいてくれれば、それでいいの。
今日、ここに来てくれてありがとう。

素直な気持ちを、正直な言葉で。
伝え終わって微笑むと、思い切り抱き締められた。
その時、頬にポツリと落ちてきた雫は、彼の涙か、それとも雪か。
今は何も考えず、クリスマスツリーから降り注ぐ柔らかな光を浴びて、この冷え切った身体を温め合おう。
焦らなくていい。
あなたは、私のすべてなのだから。


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