Story from music | ナノ


▼ さあ、永遠を手に入れたまえ

私の上で揺れることを止めない男は、押し寄せる快感の波を鎮める術を知らないようだ。
ただその波に呑まれるがまま、女の肌に唇と舌を這わせて震える私の吐息に痺れている。
皺の寄ったシーツも枕も、お互いの身体を揺らし合って乱した跡だ。

「はぁ……、なまえ、愛してんで」

裏の世界では嶋野の狂犬と名を馳せている男。
表の世界でも真島の名を聞いて怯える人間がいるほど大物の男。
そんな彼も私の前ではただの愛に飢えた一人の男。

「私も愛してる」

狡猾な頭脳も、剛猛な肉体も、私の前では意味を成さない。
誰もが欲しがる名誉や金を手に入れても、彼が自身に開けた欲望の穴は埋められないのだ。
その穴を埋めるために真新しい何かを常に求めては最終的に私の許に帰ってきて、そこを私で一杯に満たす。

「なまえ、なまえ……っ」

嘘偽りが滲んだ服を脱ぎ捨て身軽になった彼は、激しく揺れて私の名を何度も呼びながら切なく呻いていた。
太陽よりも眩しく、月よりも妖しい、その艶やかに光る刺青が目に焼き付く。

汗ばんだ髪
濡れた身体
絡め合う指
重なる視線

すべてが熱となってひとつになったお互いの身体を電流のように駆け巡る。
彼が汚れた世界で生きようと、闇の世界に根付こうと、この熱は誰しもに与えられた平等で尊いものなのだ。

「なまえはずっと、俺のもんや」

彼は永遠を欲している。
命尽きるまで愛し、愛されるという永遠。

「なまえ……、俺の傍から離れんなや」

そう彼に祈られた私は、彼の額にキスをした。
彼の欲望の穴を埋められるのは私しかいないのだ。

「……私だけ?」
「おまえだけや」

ありきたりな返事だったが、私を満足させるには十分な答えだった。
彼の小指に自らの小指を絡め、ひとつの瞳を慈しむように見つめた。

「たくさん愛してあげるから、あなたもたくさん愛して」

私の身体にだらしなくのしかかった体重も
乱れた髪を気にもせず倒れ込んだ生まれたままの姿も
甘く切なく私の鼓膜に響いている荒い呼吸も

受け止められるのは私だけ。
私の穴を満たせるのもあなただけ。

「あぁ、なまえ」

欲望の穴は無限に満たされることはない。
でも、それでいいのだ。
満たされることのないこの穴を、二人は永遠に満たそうとし続けるのだから。
重ねられた唇、交わる身体。
あなたが求めているもの全てを与えよう。

ああ
愛おしい、愛おしい、愛おしい、愛おしい……――


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