Story from music | ナノ


▼ ただ、君の愛がここに欲しいよ

「ご飯、美味しかったです! ね、真島さん」
「あ、あぁ」

素直に楽しかった。……なまえの同僚に会うまでは。
思えば他の男と話しているところを初めて見たと思う。
たまたま食事をしていた店に居合わせたなまえの同僚。
俺に向ける笑顔と同じ、話す声のトーンや楽しそうな素振りも同じ。
二人きりで食事をするということはそういう関係なんだと思っていたが、それは自分一人だけだったのか。
あの男ともなまえは二人きりで食事をしているんだろうか。

「真島さん?」
「あ、すまんすまん! これからどないしようか考え込んでたわ」

どれだけ俺がなまえに惚れ込んでるのか思い知らされた気がする。
脳が勝手に腹立たしい映像ばかりを創り出して止まらない。
すぐ側にある肩をどんなに強く抱いて俺の熱を伝えても、潤んだ瞳をどんなに強く見つめて俺の姿を焼きつけても、なまえの胸中を推し測ることはできない。
所詮俺はヤクザでなまえはカタギ。本当ならカタギの男と一緒になったほうが幸せなはず。
でも……

「元気、ないですよ?」
「そんなことあらへん! なまえちゃんと一緒にデートしとるのに元気ないわけあらへんやろ」
「本当に大丈夫ですか?」
「っ……」

心配そうに俺を見つめる瞳。
どうしたらその瞳、独り占めできる?
どうしたら俺のものにできる?
どうしたら……

「なぁ……、もう少し一緒におりたいんやけど、ええか?」

二人で過ごしているこの時間がもし夢なのだとしたら、どうか永遠に覚めないでほしい。
もしなまえが俺の隣からいなくなる日が来るとしても、今だけは俺のものであってほしい。
なまえはあいつに見せた笑顔で頷いた。

なまえ……
俺が欲しいのは笑顔やない。
俺が欲しいのは、おまえの心なんや。


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