Story from music | ナノ


▼ 君が好きだよ、エイリアン

ちっぽけな公園のベンチに二人並んで座る。
遠くには都会ならではの眩いネオンと夜の喧騒。

「ここは静かでいいですね」
「もうイイ子はとっくに寝てる時間やで」
「じゃ、私たち悪い子ですね」

飲み過ぎて出来上がっているのか、なまえは不規則に点滅する古びた街灯の下で嬉しそうに笑っている。
落ち込んだことがあったとかでほんの1時間前までは泣いていたはずなのに。

「随分とご機嫌やな。あの落ち込んどったなまえちゃんはどこに行ったんや? 演技やったんかいな」
「真島さんと一緒にこうして過ごせたら元気になりますよ! ……真島さんこそ大丈夫ですか?」

笑顔から一変、今度は心配そうに真顔で覗き込んでくる。
コイツは百面相か何かか。

「忙しいやっちゃなぁ」
「え?」
「いや、何でもあらへん。俺はいつもどおり元気やでぇ! なまえちゃんとぎょうさんウマいもん食うたからな」

なら、良かった。
照れくさそうにそう言って、なまえはネオンの色が混じる薄明るい夜空を見上げた。

「なあ、一つ聞いてええか?」
「何ですか?」
「なんで俺を誘ったん? なまえちゃんなら他にも友達いてるやろ?」
「…………」

若干の沈黙のあと、なまえが耳元で囁く。

「真島さんが良かったからです」

はにかむなまえを、古びた街灯が美しく照らしている。
公園には二人きり。
心地よい風が髪を揺らすと、それを合図にしたかようになまえはゆっくり目を閉じた。

「こないな、時は……」

誘うように薄く開かれている唇に吸い寄せられ、自らの唇を近づける。
焦らすようにゆっくりと。
そしてもうすぐ着地するという距離で、

「すぅ……すぅ……」
「……お、おまえ」

コトリ、と肩に預けられた頭。
気持ちよさそうになまえは寝息を立てていた。

「ついさっきまで話しとったやないか」

なまえに翻弄され、随分自分も滑稽な奴になったものだと思わず苦笑いする。
着地予定だった唇は諦め、目の前にある額へと静かに口づけて、優しく頭を抱き寄せた。

「まったく、宇宙人みたいなやっちゃな。……ま、俺も変わっとるから同士かのう」

あと数時間で夜が明ける。
なまえを起こして家に連れ帰ってもいいのだが、古びた街灯が二人を照らし終えるまでこうしていたい気分になった。

「ぅ、ん……真島さん……」
「なんや? ……って寝言かいな。ホンマにおまえは……」

大好きやで、宇宙人。

柔らかいなまえの髪に頬を寄せて、押し寄せてきた眠気に抵抗することなく目を閉じた。


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