Story from music | ナノ


▼ 見上げたらモーニングムーン

1ヶ月前に別れたはずのなまえが今、俺の布団で静かに寝息を立てている。
深夜1時。どしゃ降りの雨の中を傘も差さずに突然やってきて、玄関の扉を開けた瞬間、しがみつくように抱きついてきた。

「なまえ……。何があったんや? とりあえず、中入れや」

雨と涙で顔をぐしゃぐしゃにして、こんなにやつれて取り乱しているなまえを初めて見る。いつも冷静で、笑顔が可愛くて、優しい姿しか俺は知らない。
力無く座り込んだなまえの髪や身体をタオルで拭いてやるが、なまえは何の反応も示さずにされるがまま。

「ここままやと風邪引いてまうな。俺のシャツに着替え――」
「私……やっぱり真島さんがいないと、ダメ……」

身体が冷えたせいか、それとも緊張か。
俺の腕を掴んだなまえの手は震えていた。
そんなことを言われたら……。

「……言うたやろ、俺は極道で生きとる。俺とおったらおまえ……不幸になるだけや」
「1ヶ月地獄だった! 辛かった……。真島さんに会いたくて仕方なくて、我慢できなくなっちゃったの……ごめんなさい」

ああ、せっかく死ぬ思いで別れてやったのに。
おまえを幸せにする為に別れたのに。
そんなことを言われたら……。

「なまえ……」

透けたブラウスが、濡れた瞳と唇が、俺の理性を一瞬で溶かして、気づけばなまえを押し倒して激しく抱いていた。


――――――


安心したような表情で眠るなまえの額に優しく口づけて、窓を開けてみれば朝焼けに浮かぶ月。
屋根からポタリと落ちる雨雫の音を聞きながら煙草を吹かす。
あのどしゃ降りの雨はなまえの涙で、こうして雨が上がったのは俺が抱いたからか? なんて柄にもないことを思いながら。

「ん……まじ、ま、さん」
「起こしてもうたか? すまんな」

布団から抜け出したなまえはすぐに俺の元にやってきて、当たり前のように抱きついてくる。
寝ぼけ眼で髪は寝ぐせだらけ、パジャマ代わりに着せた俺のシャツはぶかぶかで、あまりの弱弱しさに思わず笑みが漏れた。

「雨、上がったんですね」
「ああ。それに見てみぃ、まだお月さんが出てるんやで。…………また見ようや、二人で」

嬉しそうに頷くなまえを、命を懸けて守るとモーニングムーンに誓った午前5時。


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