2



(──ひより)


──真っ白な空間。何も無い、白の世界。
透き通った心地のいい声が、無機質な空間一帯に響き渡る。しかしその声はどこから聞こえてきているのかさっぱり分からない。辺りを見回してみても、見えるのはやっぱり白一色。

「誰、ですか?」
(……ひより、お願いだ。君ならきっと、)

居場所も分からない声の主を掴もうと、闇雲に思い切り手を伸ばす。けれども掴めるはずはなく、大きく広げた手のひらは白い宙をしばらく彷徨ってから虚しく空気を掴んだだけだった。





「──……んん、」

ゆっくり戻ってくる意識の中、重たい瞼をたっぷり時間をかけて持ち上げてみる。……と、夕空が一面に広がっていた。茜色は次第に黒に染まっている。

「変な夢見た……」

ぼんやりしながら空を眺め、もう一度ぼんやりする。
真っ白な空間。今までに見た夢の中で飛びぬけて不思議な夢だったと言ってもいいぐらいだろう。いつも見る夢は大抵忘れてしまうけれど、今回に限っては声質までもはっきりと覚えている。あれは一体何だったのか。


──それから私は、ようやく気付く。


「……は、」

ゆっくり上半身を起こして、その光景に思わす絶句した。
──……森に囲まれた一角。辺りを見回しても、全く見覚えがない場所。


……は、はあ、これはいったい、どうしたものか。




prev


- ナノ -