5



「"シッポウシティのシッポウは七つの宝物"……」

チェレンくんが看板を読み上げる。なんとか野宿は間逃れたものの、街に着いたときには既に視界が悪くなるぐらい暗くなっていた。

「このまま真っ直ぐ行けばポケモンセンターみたいだね」

看板横にあったシッポウシティの全体図を眺める。私はてっきりチェレンくんもこのままポケモンセンターに行くものだと思っていたけど、チェレンくんは「それじゃ」と私に背中を向け別の道を進み始める。

「ポケモンセンター、行かないの?」
「僕はこの先の草むらでジム戦に備えて特訓してくるんだ」

ああ、今度こそ本当のさよならだ。暗い中で草むらをうろつくなんてどうかしてる。私は絶対嫌だ。恐ろしすぎる。
チェレンくんの背に手を振りながら、グレちゃんの頭に手を置いて左右に動かす。どうもすぐ近くにいると触りたくなってしまうのは私の性らしい。

「私たちは明日にしようか」
『そうだな。今日はもうゆっくり休んだ方がいいだろ』
「今日のご飯、何がいい?」

ふと、グレちゃんの視線が上がる。それは私を通り越したその先を指していた。それに気付くのが早いか、釣られて持って行った視線の端に突如入り込んできた、暗闇には映え過ぎる黄緑色色のその髪に心臓が一度大きく鳴る。

「──ねえ、キミのポケモン、今話していたよね?」


……まさか、まさかでしょう?


「ボクの名前はN。ボクもトレーナーだけどトモダチをボールに閉じ込めるなんて、そんな可哀想なことはしないよ」

随分と早口で言葉を紡ぐその人は、……私が探していた人物そのものだったのだ。
Nくんは私の腰についているボールを見ると顔を伏せ、足早にグレちゃんのすぐ目の前までやってくるとその長い脚を曲げで屈みこむ。グレちゃんが空かさず私を後ろに追いやり自らの背に立たせると、警戒を表す電気をぱちりと走らせた。けれどもNくんは電気なんてお構いなしに真っ直ぐグレちゃんに手を差し出す。そっと頬元に触れるNくんの手に、若干身体を仰け反らせるグレちゃんを黙って見守る。

「ねえ、キミはボールに入れられてシアワセ?人間に無理やり戦わせられて、それでキミは本当にシアワセなの?」

Nくんの言葉とプラズマ団の言っていた言葉が重なって急に鼓動が速くなる。
気にしていない、ふりをした。けれどもそれは隠しきれないで、今こうしてしっかりと全身に音を鳴らしている。私はNくんの言うようなことを考えたことが無かった。それ以前に思いつきもしなかった。だから余計、グレちゃんからどんな答えがくるのかと不安になっていたのかも知れない。
……ふと、合う目線に不意打ちを食らい、その答えにも目を見開く。

『もちろん、幸せに決まってる。俺は戦わせられてるんじゃない、ひよりのために自ら戦ってんだ』
「……!?」
『そうそう、俺たちは好き好んでひよりちゃんに付いてきてるのさ。……俺は今が、一番幸せ』
『オレもー!とーっても幸せだよー!』

ぽかんと口を開けるNくんと同じぐらい私も開けていたと思う。途中からロロとチョンも勝手に出てきたと思ったら、私にすり寄ったり羽を足に絡ませたり。なんだか気恥ずかしくて、……嬉しくて。鼻に手の甲を当てて一回空気を吸い込んだ。変ににやける口元がちゃんと隠れていればいいんだけど。

「こんなことを言うポケモンがいるなんて、」
「私は……、まだ、少ししか旅をしていないけれど。でも、トレーナーと一緒にいて幸せなポケモンは、沢山いると思います」
「キミはそういうけれどボクはそう思わない。キミのポケモンのようにシアワセなポケモンなんてひと握りだけさ」

そういうとNくんは空を睨むように見上げる。Nくんって思っていたよりもネガティブなのか、それとも私がポジティブすぎるんだろうか。ともかく私はあの女の子とヨーテリーのように幸せそうな人間とポケモンの姿を実際見ているし、意見を変えるつもりは毛頭ない。私は私、NくんはNくんだ。

「ボクはポケモンというトモダチのために世界を変えねばならない。ポケモンが完全となった未来を見たいんだ。声が聞こえるキミなら分かってくれるよね?」

ああ、私が聞こえてるって分かってたんだ。Nくんの問いにそのまま黙っていると、「ふうん」なんてつまらなそうに呟いてから背を向けられた。……が、私はNくんの手首を咄嗟に掴む。思っていた以上に細いそれにドキリとしながら、深く被った帽子から顔を覗かせるどこか虚ろな目をそっと見つめ返した。神出鬼没の彼を易々とここで逃すわけにはいかない。

「……ボクに、何か用があるのかい?」
「わ、私をっ!Nくんのお城へ、連れていってくれませんか」
「どうしてキミが城のことを知っているんだ……?」

ナイフのように刺さる視線を感じつつ、息苦しい中、慌ててバックから例の白石を取り出した。"Nくんを探せ"と言っていたぐらいだから、きっとこの石のことはNくんも何かしら知っているに違いない。見せれば案の定、Nくんが驚いた表情浮かべた。唾を飲み込み、言葉を繋げる。

「私は、この石をくれた方にNくんを探して城まで来てくれって、頼まれたんです」
「……いや……今のキミでは、まだ城へは連れて行けない。それにボクもまだ、……」

言葉を途中で止めたと思うと、そのままNくんは目を伏せる。長い睫毛が影を作り、より哀愁を帯びる表情。Nくんの手が彼の腰についている小さな箱に軽く触れ、かたりと小さな音をたてた。

「……それは伝説のポケモン、レシラムがキミに託したんだろう。もしも、レシラムとトモダチになろうというなら力が無いと駄目だ。キミにはまだその力が全く無い」

レシラム……!?ゲームのパッケージにすらなっている真っ白で美しい姿の、あのレシラムさんと私は話をしていたというのか。驚愕の事実に思わず言葉を失って、声なき声をぱくぱく紡ぐ。どうして、何故、私なのか。謎は深まるばかりである。

「ボクはゼクロムとトモダチになって誰もが納得する力を手に入れ、そしてすべてのポケモンを救ってみせる。……ボクが英雄になったら、キミともトモダチになれるかな」

とても小さな、けれど何か不思議な力を持った言葉だった。私の耳にもきちんと届いたけれど、それは私にとって疑問でしか無い。再び背中を向けた彼を見ながら手を差し出して、ぼんやりとNくんの揺れる髪を見つめる。

「友達になら、今なれます。私と、友達になってください」

振り返って私を見るNくんの表情は驚きに満ち溢れ、中途半端に開いている口はまるで酸素を求める魚の如くぱくぱくとした動きを繰り返していた。それからふと、首をゆっくり左右に振りながら、何と言えばいいんだろう、とにかく言葉にし難い表情を浮かべ、私を見る。

「──ボクは化け物だから、トモダチにはなれないよ」
「え、……」

……心臓を、掴まれる。返す言葉が、何も見つからなかった。
そうしてそのまま逃げるように去って行くNくんを引きとめることなんかできなくて、私はすでに消えたNくんのその背の幻を何度も繰り返し見ては、ただ突っ立っていることしかできなかった。





バケモノとは、一体どういうことだろう。
良い意味では無いのは確かである。ああ、こんなことになるならもっとゲームを進めておくんだった。途中で放置していた私がバカだった。
テーブルに腕を乗せて思い切り伸ばしうつ伏せになっていると、コツンと誰かに頭を叩かれた。のろのろ顔をあげて左を見るとグレちゃんの姿がある。

──場所はポケモンセンター。
運よく大きな部屋を借りることができ、グレちゃんとロロは擬人化している。それを見ては羽をばたつかせるチョンからは羨む声が絶えなく聞こえる。そんな中、私はあれから悶々とNくんについて考えていた。そんな私の隣にグレちゃんが座ってひとつため息を吐く。

「なんだよその顔」
「元からこういう顔ですー」

ぷいと顔を背けるけど、すぐさま顎を片手で掴まれグレちゃんの方に顔を向けさせられた。そのまま目をぱちくりしながら見ていると、我慢しきれなくなった笑いを零しながら今度はグレちゃんが顔を背ける。

「わっ、笑わないでよー!」
「ひより、Nの言葉が気になってんだろ」

急に真顔になって何を言うかと思えば……。それに渋々頷くと、グレちゃんが私から手を離して、額にでこピンを食らわす。地味に痛くて咄嗟に額に手を当てながらグレちゃんを睨むけれど、既に視線は私に有らず。仕方なく口先を尖らせたまま私も正面を向いた。今は真っ白の綺麗な壁が目に痛い。

「他人の心情なんて、悩むだけ無駄だろう」
「それは私も分かってるけど……でも、どうしても気になっちゃって、」
「まあ、頭の片隅にでも置いておけばいいんじゃないか?わざわざ口に出したってことは、アイツもきっとひよりに何かを気付いて欲しかったんだろう」
「……」
「それが何かは分からないが、きっといつか分かるさ。……だからお前がそんな顔する必要はないんだよ」

昔から顔にすぐ出るとは色んな人に言われてきたけど、そんな酷い顔してたんだろうか。素っ気ない態度を見せつつ、私を心配して言葉をかけてくれるグレちゃんの横顔を見ながら閉じたままの口を右に寄せたり左に寄せたり。解決した訳でもないのに、もうケリがついたような感覚だ。
何も言わないままそのままでいると、ロロがふざけてグレちゃんの背中から覆い被さってきた。斜め前に押されて顔を不満な表情を浮かべるグレちゃんとそれに構わず私に笑みを見せるロロ。

「あのね、グレちゃん、ひよりちゃんがニコニコじゃないから心配してるんだよ」
「なんで俺におぶさってんだよ、降りろ今すぐ!重い!」

はいはい降りますよ。なんてぼやきながらのろのろグレちゃんから離れたと思うと、今度は私の背後に立って抱きしめるように覆い被さってきた。確かに重いけれど温かい。頬をくすぐる猫っ毛に目を細める。

「ああー、やっぱり抱きつくなら女の子がいいよね!柔らかいしいい匂いするし」

ガタリ。隣の椅子が苛立ったような音も立てた。椅子から立ち上がったグレちゃんが私とロロに身体を向けると同じぐらいに、バサバサと羽の音がした。チョンがグレちゃんの頭の上に華麗に着地し、まるで巣にいるかの如くリラックスした体勢になる。今にも卵を産みそうな画である。

『ひよりが元気無いとオレたち嫌なんだよー……』
「……だからなんで俺に乗っかるんだよ」
『気にしない、気にしないー!』

ふと、ロロが私から離れると勢いをつけてチョンと同じようにグレちゃん向かって飛び跳ねる。しかしながらポケモン姿のチョンとは訳が違う。大の男が勢いをつけて飛びついたのだ。これには流石のグレちゃんも耐えられなかったのか、まるでドミノ倒しのように床に倒れる。チョンは二人が倒れる寸前に羽ばたいて私のところへ逃げてきた。無意識に伸びた手がチョンの背中に触れ、上下に繰り返し動く。羽、ふっわふわ。最高。

「おいにゃんころ!何すんだ!」
「ここは俺も混ざろうと思って」
「混ざらなくていい!」
『"ケンカするほど 仲がいい"って、ねー、ひよりー』
「そうだねー、チョンー」

下手に巻き込まれるのも勘弁なので、チョンと一緒に第三者を決め込む。引き続き羽を撫でながら、あーだこーだと続けるグレちゃんとロロを眺めていた。さっさと退かせばいいのに退くまで律儀に待っているグレちゃんと、完全におふざけの入っているロロ。……何だかじわじわと笑いが込み上げてくる。

「仲が良いやら悪いやら、」

笑い含みで呟くと、一気に視線が私に集まってきた。びっくりしてそのまま固まり瞬きを繰り返す。

「ひよりちゃん、今、楽しい?」

ロロの問いの真の意味を想像し、深くゆっくり頷いて見せる。それに返ってきたのは満足げな笑み。少しばかりこそばゆい暖色の気持ちが、ポッと胸に灯りをともす。
答え合わせはしないけれど、勝手に私の想像通りだったということにしておこう。


「──……、!」

立ち上がる2人を椅子に座ったまま眺めていると、ふと、"あの声"が頭に響いた。
不定期にしか会話が出来ないため、何としてでも声を拾わなければならない。すぐさま意識をそちらに集中させ、声に耳を傾ける。

(──ひより、Nには会えたみたいだね。……良かった)
「あの、貴方は……レシラムさん、なんですか……?」

Nくんが言っていた通り、本当にこの声の主がレシラムさんなのか。、すると少し間を空けてから再び声が聞こえてくる。

(皆さん初めまして。私はレシラム。人間からはそう呼ばれているよ)
「みなさん?」

首を傾げながら目線を上げると、グレちゃんが向かい側の椅子に腰かけながら「俺たちにも聞こえてる」と私を見る。なるほど、レシラムさんがみんなにも声が聞こえるようにしたようだ。そんなことも出来てしまうのかと内心未だに信じられずに、これも夢の中での出来事のような錯覚に陥る。

(……ひより。実は君に、先に言っておかないといけないことがあったんだ)

穏やかだった声色が揺らぐ。空白の時間を詰んで、レシラムさんが言葉が降る。

(ひよりをこちらの世界に連れてきてしまったのは、……私なんだ)
「あ……、……ええっ!?」

まさに、私が知りたかった答えがこんなにも早くに出てしまった。グレちゃんからは、さして驚いた様子は窺えない。ロロとチョンに至っては、未だ私について言っていないため何の話だか分からないだろう。そう思いつつも、ロロの表情を見るに既に何か察しているに違いない。チョンはポケモンの姿のままだからはっきりと表情が分かるわけではないけれど、意外と鋭い勘を持っているようだしロロと同じことが言える気がする。二人もこのまま話を聞いてくれるようなので、私はレシラムさんとの会話を続けることにした。

「あの、どうして私だったんですか?他にも連れてこられる人間ならたくさんいたはずです」
(私と波長が合って、且つ向こうの世界から消えかけている人物を探していたんだ。そこで、その条件にぴったり当てはまったのがひよりなんだよ)

なーるほど、……で、納得できる答えじゃない。波長というのがどういうものなのかさっぱり分からないけれど、それよりも"消えかけてる人物"とレシラムさんは言ったのか?言ったよね?……こっちの世界に来る前の出来事を思い返し、思わず震え立つ鳥肌に腕をさする。

「わ……わ、私、向こうの世界では死んでる、……んですか……っ?」

急に体中に心臓の音が鳴り響く。仮に向こうで死んでいたら、今ここに居る私は何だろう。それに死んでいても私は今、ここでしっかり生きてるし……ああ、もう訳が分からない!

(大丈夫、まだ死んでいないよ。)
『"まだ"ってことはー……そのうち向こうのせかい?のひよりは死んじゃうのー?』
「おい馬鹿!お前空気読め!」
『空気は読めないよー?文字ないもんー』

咄嗟にグレちゃんがチョンの口を押さえるも時既に遅し。ゆっくりとこちらを見るグレちゃんとロロに真顔を返すことしかできない。……チョンに言われて気づいたけど"まだ"とは。"まだ"とはなんだ。結局私は死ぬのか。

(あちらとこちら、時間の流れの差は大きい。大丈夫、ひよりが私の願いを叶えてくれれば、向こうでも死なないようにしてあげられるよ)
「私がもし、レシラムさんのお願いを叶えられなかったら、」
(……残念ながら、私にはどうにも出来ないね)
「…………」

事故に遭ったあの時から、きっと私には選択肢なんて無かったんだろう。
伝説のポケモン絡みとなると、規模が大きすぎるし何よりこの世界への影響を考えてしまう。きっと私がいなければ、主人公であるトウヤくんがやるようなことをお願いされるに決まっている。そんなの私に出来るわけがない。けれどやらねば、向こうの世界の私は死ぬ。……旅は楽しい。けれど、やっぱり私の帰る場所はあちらの世界なのだ。
大人しく願いを受け入れるため、じっと耳を澄ましていると一瞬ぼこり、と水泡の音が聞こえた。何処か胸をざわつかせるような不穏な音ではあったけれど、すぐにレシラムさんの透き通る声で相殺される。

(私と私の弟……そしてNを、助けて欲しいんだ。私たちはゲーチスに利用されようとしている。詳しいことは私にも分からないがそれだけは言いきれる)
「つまり俺たちは3人が利用される前にゲーチスって奴をどうにかすればいいんだな?」

グレちゃんの言葉にレシラムさんが頷いてから、不安そうに私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
私がレシラムさんに会って知りたかったことが会わないうちに全て分かってしまったけれど、代わりに難題が降りかかる。そもそも旅の目的がレシラムさんに会うことだった。しかしこれにゲーチスさんを阻止し、さらにはレシラムさんたちを助けるという荷の重いものがプラスされた。もっと言うとこれには私自身の命も懸っているのだ。

「……私にそんなこと、できると思っているんですか」

まるで拗ねる子どものような言い方だと自分自身でも思った。でもいきなりこんなことを頼まれて「はい分かりました」なんて、少なくとも私は言えない。……色んな重みで、既に押しつぶされそうだ。所詮、私はその程度の人間なのである。

(私はひよりのことを、信じているよ)
「会ったこともないのに、ですか?」
(私には君しか頼ることができない。信じて、待つことしか出来ないんだ。だから例え会ったことが無かったとしても、私は君を信じている。……きっと、ひよりなら大丈夫)
「…………、」

他の世界の者に助けを求めるぐらいだ。もしかするとレシラムさんにも最初から選択肢なんてなかったのかも知れない。
──……目を閉じて、目を開けて。大きく息を吸いこんでから、鼻から全て空気を出す。……"だいじょうぶ"、。

「……頑張って、みます。信じてくれる、あなたのためにも」
(ありがとう、ひより)

小さく笑いながら言われたような気がした。そうしてレシラムさんの声が消え、それっきり何も聞こえなくなる。そうして緊張が解けたように、動きを最小限に抑えていた三人が各々に動き出した。私も肩の力を抜き、椅子の背もたれに寄りかかる。

「……ねえ、何かさ、水みたいな音聞こえなかった?」

終始聞こえたあの不気味な水泡の音がどうも気になって訊ねてみたものの、それぞれ横に首を振るばかり。どうやらあの音が聞こえていたのは私だけらしい。……気のせい、なんだろか。

「ひよりちゃん疲れてるんじゃないの?早く寝たほうがいいよ。あ、俺が寝かせてあげようか?」
「遠慮しておきます」

ロロの言うとおり、確かに疲れてはいる。やっぱり気のせいか。レパルダスに戻り私の足元にすり寄って来るロロに伸びそうになった手を抑え、欠伸をしながら思い切り上に伸ばした。
助けるのは早めの方がいいものの、強くなるには時間がかかる。時間制限はあるようで無いもののようだ。そんなに急がないでもいいだろう。

──後々、私はこれを後悔することになるなんて夢にも思っていなかった。



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