記録、0
【思想構造学科】
我が医療機関には、そう言った特殊学科が存在する
初めてこれを目にした者は、一体どう言った学科だと想像するだろうか
脳波の研究を進める学科だと思うだろうか?
それとも、一人一人の思想や概念を根気強く調査する学科と思うだろうか?
まあ、どちらも半分正解で半分不正解…と言った所だが
思想構造学科とは、異常思考を持つ者の話を聞き、脳波を計測し、徹底的に調べ上げて、その異常思考は何故発生するのかを調べていく学科
回りくどく言うとそんな所だが、所詮は精神異常者を監視、研究する為の学科だ
人の声を聞かず、視えない何かとしか話さない者
理由も無く家族を惨殺し、少年院に入れるにも幼な過ぎて此処へ連れて来られた者
何を言っても何をしても、不気味な程に笑い続ける者
症状は様々だが、誰が、どこから、どう見ても異常な者ばかり
その者達の思想を読み、聞き、理解し、異常を正常に正す方法を探し出すのが我々の仕事…と言った所だ
まぁ精神病治療の一環だろうが、此処はその中でも重度な者……通常の精神病院で匙を投げられた者ばかりが来る場所で、自分が異常者だと言う事にすら気付かない
だが、そんな異常な者達のその中で……
「あら?オジさん、誰?」
私が担当したのは…私の人生を大きく変えた患者は……
「あ、オジさんも先生なのね。もしかして私の新しい担当の人かしら?」
……19歳の、少女だった
「ああ、私が君の担当だ」
「そう、宜しくねオジさん」
異常な者達の中で、一際異常であると囁かれていた彼女は
異常者とは思えない、綺麗な微笑みで私を見ていた
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