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次の2択から1つ選ぶとしたら



『とむりん!とむりん!今日は残念だけど一緒にいれないの…』

あからさまにしょんぼりした様子で名前はくねくねしている。

「その動きイモムシみたいで気持ち悪いよ。」

『今日は禁じられた森の畔である薬草を取りに行くのだよ』

「行くのはいいけど気をつけなよ。慣れてるとは言えど禁じられた森なんだから」

はいはい、と適当に相槌を打ちながら離れていく名前。久々に1人になりやっと穏やかな時間が流れ始める。1ページ1ページと読み進めてゆく。気がつけばあっという間に日が落ち窓の外は薄暗くなっていた。僕はそろそろ戻るかと椅子から立ち上がり寮へと足を進めた。名前はまだ帰ってこないしなんだか食事をする気にもなれず談話室のソファに座り名前の帰りを待ちつつまた本を捲る。時間が立てど、名前は一向に帰ってくる気配はない。もうすぐ就寝時間になるのに…妙な胸騒ぎがする。読み終わった本をパタンと閉じ禁じられた森へと僕は足を進めた。ホグワーツ内と違って森はより深く暗くみえた。名前がいつも遊んでいる場所へと赴くとそこには誰もいない。焦りが僕の足を急かした。湖周辺を杖で照らしながら走った。なんで、なんで僕がこんなに走らなきゃならないんだ。イラつく気持ちをなんとか押さえ込みやっと湖を1週すると所で寝転んでいる名前を発見した。

「…はぁっ、はぁっ、…っ、」

「おい、名前!」

近づき名前を呼ぶがビクともしない。「…名前?」名前の手にはみたことない謎の果実のようなものをもっており、それには齧り跡がついており、反対側には薬草が散らばっている。名前に触れるとゾッとする程冷たく咄嗟に手を引っ込めた。とりあえず医務室に運ばねばと冷静に考えるふりをした。名前の首と足に両腕を伸ばし抱き上げる。名前の手から果実が転がり落ちた。果実を浮かせ、名前の上にのせる。その時名前の胸が動いていないことに気づいた。耳を、名前の口に近づけるとそこには望んだ呼吸音は聞こえず足から崩れ落ちそうになった。それをなんとか堪え医務室へと運ぶ。名前の眠っている様な顔をみると走馬灯のように色々な思い出が蘇る。
医務室の扉はいつでも空いている。ゆっくりと入ると校医に名前を見せ、白いベットに寝かせた。「これを、食べたみたいなんです。」そう謎の果実を渡した。彼女は慌ただしく医務室を出ていった。僕はベットの横の椅子に座り名前を見る。いつもほんのり赤い頬は今はそんな赤みすらない。手を触ってもいつもの温もりすらなかった。「…僕の知らないところで勝手に置いていくなよ」僕の声は小さく泡のようにきえていった。医務室に戻ってきた校医は色々な教授を連れてきてあわあわとしている。自分の足元に影が生まれ、顔を上げるとダンブルドアが微笑みながら「こちらへ」と招く。

***
吹き抜けの中庭のベンチにダンブルドアと2人座る。いつもならダンブルドアに対する嫌な気持ちが沸々と湧き上がってくるはずななに、今はなんの感情もない。

「今はなにも考えられんかの」

「…いいえ、先生。」

「Ms.苗字はとても元気な生徒じゃ。だが好奇心は猫をも殺す。」

「存じています。」

「…ふむ。トムや、今何を考えておる、どんな気持ちかの」

僕の神経を逆撫でするこいつが嫌いだ。

「……」

「見たところによると、Ms.苗字は大丈夫じゃよ。あの果実は一口齧ると一時的に仮死状態になるだけじゃ。今夜はもう遅いから寮に戻りなさい。なぁに、心配せずともよい。」

「…失礼します。」

のたりと腰を上げ歩いてる感覚すらない足を寮へと進んだ。寮への扉を開け階段を降り、自室へと入る。ルームメイトは相変わらず隣の部屋に行ってるようで静かだ。ローブを脱ぎクローゼットに綺麗にかける。ルームウェアに着替えベットに入った。

「僕って、泣けるんだ」

初めて流した涙は名前のせいだと思うと少しはこの状況がマシになる気がした。名前の冷たい頬の感触が未だ右手に残っている。右手をぎゅっと握りしめる。僕はあの時少なからず動揺していたのは確かだ。あれだけ他人を信用した事がなかったのに名前には他とは違う感情があるのは確かだ。そしてまた名前へ対する感情は僕を僕じゃなくなってしまうのも確かだった。名前は僕が卒業と同時に消えてしまったらどう思うだろうか。また泣くのだろうか。目を閉じると未来の名前が笑っている顔が思い浮かぶ。
僕が死を怖がり、回避するために魂を裂くことを人を殺すことを名前は受けて入れてくれるのだろうか。

「お、リドル戻ってたんだな。寝そうなところ邪魔したようで悪かったな」

「いや、寝付けない所だったし大丈夫だよ。」

「それより聞いてくれよー。俺さ彼女いるじゃん。ほらミーガンだよ。だけど、それがちょっと別の子も気になっちまって…どうしたらいいかな」

「どうしたらいいって君はどうしたいの?」

「それがさ、、、両方好きなんだよ。」

「Ms.ミーガンと付き合って他の子を好きになるなら別れるしかないんじゃないかな」

「けど選べねーんだよな。その相談でノアの所に行ってたんだけど、あいつ恋愛は結構真面目な方だからどっちかはっきりとすべきだってガチで怒り始めて撤退してたとこ」

僕のルームメイトは中身のない話ばかりを僕にしてくる。いつもなら軽くあしらうのだが今は余計にイラついて仕方がない。

「2つもなんて我儘じゃないの?一択に絞るべきだ。」

「ノアと同じこと言うなっつーの。」

そう言うと「話聞いてくれてあんがとよ」と彼は部屋を暗くし寝についた。僕は先程の言った自分の言葉を自分の事は棚にあげて何を言ってるんだろうと自己嫌悪して目を瞑る。けどやっぱりその日は寝れなかった。

20200929