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10年後にも一緒にいられたら




ダンブルドアと名前の会話を盗み聞きしていると自ずと誰の話をしているかなんて直ぐにわかった。たまにダンブルドアは名前が弱っていると虫にみたいにズッと湧いては名前に愛という甘い囁きを説いていた。それを聞く度名前は挫けそうな気持ちが一気にいつものモチベーションへと戻る。僕にはダンブルドアの代役なんて到底無理な話だ。名前との関係なんてこのホグワーツ卒業までの間の暇つぶしなだけ。別に名前なんかに特別な感情なんて何一つ持ち合わせちゃいない。ただ名前はそんなことは無い様子なのは気づいてた。気づいてたのに、僕は何故気づいた瞬間に名前を突き放さなかったのか分からない。もう何年もその疑問が頭の片隅には浮かぶ。ただ
それはいつまで経っても答えは見つからないままだ。ダンブルドアは僕に気づくことなく階段を降りてゆく。名前がぽつりと『ずっと一緒にいたいのに…』と消え入りそうに呟いた。僕はこれから先名前をどうするつもりなのだろうか。僕のやることの傍らに名前が居るのを思い浮かべてみると、なんだか格好のつかないビジョンになる。ハハッって軽く笑ってしまった。

『…リドル?』

いきなり名前を呼ばれ柄にもなく内心ビクッとするが平然を装いネクタイを締め直しながら名前に近づく。

「こんなとこで何してるの?」

『特になにも!ただ風にあたりたくて。私ここ好きなんだぁ!』

大きい音を立て名前は腰をその場に下ろした。僕とつられるように名前の横に腰を下ろす。

『ここってさ、ほら誰も来ないじゃない?なんか私だけの秘密の場所って感じ!…色んなことをさ考えることに丁度いいんだ。』

何故だか名前と腰を据えて話をするには今が1番いいと思った。僕は愛という恐れを捨て、名前に切り出した。

「名前は10年後も一緒にいる事を想像出来るかい?」

名前は『んー!』と少しばかり考えるとまるで先程の僕みたいに優しそうにふふふって笑っている。それは多分僕が想像していた未来とは違うと思うけど笑ってるってことは僕といればこいつは幸せなのかと確信を得られた。

『そりゃーそうね。けど、本当のことを言えば私はリドルとこの先一緒に入れるのかなって最近は考えたりする。』

綺麗な瞳が月の光に反射してキラキラしている。そっと名前の髪の毛に手を伸ばし少し絡まっていた箇所を手ぐしで綺麗に伸ばした。

『逆にリドルは想像できる?私が横にいる未来』

「名前が隣にいると格好がつかないのはもちろん想像できたよ。」

そう言うと名前は少しいつもの笑顔で僕を見て笑った。名前は自分のポケットに手を入れそこからなにか取り出すと僕の手にそれを置いた。

「なにこれ」

『それね、耳に付けて過去を思い浮かべると5分間だけ過去に飛べるんだって。けど、たまに失敗して未来に飛ぶらしいよ。私は2個貰ったけど一つあまっちゃったからリドルにあげる!』

耳元で『使うなら気をつけてね!』と名前は囁いた。

「僕は別に戻りたい過去とかないんだけど…まぁくれるって言うなら貰っとてあげる。」

『ありがとう』

苦笑する名前。それを受け取ると僕ははすぐさま耳に付け『あ、思い浮かべたら飾りのところを押してみてね』と言う名前を横に僕は躊躇いもなくかちりと押した。名前の『え!?今!?今なの!?』と言う言葉が聞こえた気がした。

****

なにかに吸い込まれるかのように自分の周りの景色がすごい速さで移動している。そんなに時間はかかってないと思う。気づけばそこは…

「…ここ、どこ。」

全く知らない場所へ出たようだ。僕は特に意味もなくあのイヤリングを装着し、なにも考えずに飾りを押したのだ。自分でもなんでそんなことしたのか分からない。ただ何かが起きる気がした。どこかの家っぽいけど、あまりに暗すぎる。ルーモスと唱えると杖先がふんわりとあかりが灯る。2階の方から微かな話し声が聞こえ、杖をぎゅっと握り、足音を殺しながらゆっくりと声の元へと近づく。その扉の向こうからは名前の話し方にそっくりな女性の声がした。ガチャとドアノブを回すといきなり失神呪文が飛んでくる。それんプロテゴで防ぎ前を見る。そこには見たくもなかった自分がいた。

「なっ、これは…」

『やだぁ!リドル?!?学生リドル!?』

キャッキャッとはしゃぐ名前は大人びていても名前だった。どうやら僕はたまに失敗する方に来てしまったようだ。

『あれだな!?スリザリンテラスでのリドルっしょ!』

いやぁ、懐かしいなとニコニコ常時ご機嫌な名前は『まぁまぁお茶でも』とティーカップを出してきた。未来の僕はただ無表情で僕と目も合わせようにしない。まぁ、しょうがない。僕だって学生時代の僕が現れたら同じことをする。

『まさか失敗するとはねー』

「僕が失敗したかのように言うな。あれは悪戯仕掛人のやつか?」

『うわー悪戯仕掛人とか懐かしすぎるぅううう!そうそう!あれは悪戯仕掛人から仕入れたもの。』

「こんな失敗作を売るだなんてプライドはないのか。」

『あの後さ、戻ってきたリドルにどこの過去に行ってきたのって聞いても黙りしかしなくてやっと長年の謎がとけた!』

『そういうことだったのねー!』と未来の僕に絡みに行く。鏡でみる僕はあんな笑い方をしてたのだろうか?あんなに優しく笑えたのかとどこか他人事のように思った。ただこれがどのくらい先の未来か分からないけど、名前は相変わらず僕の横にいて幸せそうに笑ってる。

「名前、今幸せかい?」

『それはもちろんよ!懐かしいわね。本当に懐かしい。あの頃の私たちはどことなく自分たちの本心を隠してギクシャクしてたわね。けど見てトム。ほら未来のあなたはこんなに幸せそうにじゃない。私もとっても幸せなの。ただちょっと不満をいうならば、この家が暗い事ね!もう少し明るい家がよかったわ!』

本当に幸せそうに笑う名前を見て僕は酷く安心した。瞬きをし、瞼をあげるとそこはもう元のテラスで名前が心配そうに僕の肩を殴っていた。

「殴るな。痛いだろ」

『やっとかえってきたー!めっちゃ怖かったんだから!いきなり白目向いて動かないしすんごい焦ったんだから。』

『よかったぁ』と深い息をつく名前は本当に安堵した表情を浮かべた。

「名前はこのまま僕と死ぬまで一緒にいたい?」

『当たり前じゃん。なんで?』

もう返事は決まっていたかのように名前ははっきりと言い切った。真っ直ぐ僕を見つめるこの瞳は僕は苦手だ。名前の瞳は僕にとって眩しすぎる。

「なんで、そんなに僕のことが好きなの」

『なんでって…好きなもんは好きなのよ』

「……」

『けど、別に付き合って欲しいとかそんなんは今はいいの。ただリドルの傍にいれれば私はそれだけで大丈夫。』

こんなに僕に想いを伝えてくれる名前を素直に愛おしいと思った。未来の名前のあんなに幸せそうな顔を見ても(君を愛してる)だなんて言えない自分を情けないと、殺したいと思った。


20200929