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- ナノ -
「ねぇねぇ、トムたん。トムたん」
「…」
「トムたん、トムたん」
「うるさい。」
「朝さ!手紙が届いてたでしょ!?あれなんか花びらを1枚手に乗せると、交換した相手の名前と顔が出てくるんだって!」
「昨日の夜、花びらの色が変わって少しばかり驚いてしまったよ。何かの呪いかと思って」
「色によって相手との関係性がわかるなんてびっくりだよね!」
「けど、そんなのは占いと変わらない。信じるに値しないと思うけどね」

ポケットから手紙を取り出し広げると、

虹色 大切な唯一無二の存在
ピンク パートナー向き
オレンジ 親友
イエロー 友
レッド 妬み合う仲
ブラック

と書かれている手紙と花びらを照らし合わせみた。私のはほとんどイエローばかりだ。ただその中の1枚の花びらだけ虹色がある。それは言わずもがな誰と交換した花びらか分かった。

「黒ってなんなんだろうね。特に書いてないけど…」
「さぁね。いつもあやふやにするのが狸じじぃのやり方さ。」
「ふーん…。あ!ほら見て!この虹色!もちろんリドルにもあったよね!」
「…内緒」

名前はずっとニマニマと薄汚い笑みを浮かべながらくだらない戯言をほざいている。ちゃんと前を見ていないから注意すると「大丈夫ー!」と言いながらすでに転んでいる。そんな事を思いながらポケットから花びらを1枚取り出した。確かに僕の虹色の花びらの相手は名前だ。だがその他の花びらは全て黒色だ。僕が察するにこの黒は…。いつの間にか大広間に着き、名前はいつもの定位置に座ると、皿一杯に好きな物を好きなだけ盛ると手を合わせ「いただきます」と声を出した。いつ見てもこの動作は綺麗だと思う。今ではこの光景は見慣れたが、初めて見た時は見た事ない仕草で物珍しかった。僕も野菜を皿に乗せ、フォークで刺すと口に運んだ。

「名前、口の横についてる」
「ん、」

口を僕の方に向け、早く拭いてくれと言わんばかりだ。ナプキンで口を拭ってやると「ありがとー!」とまた食べ始めた。少し遠くに置いてある新聞に手を伸ばし広げると僕に黒い影が落ちてきた。顔を上げると、そこには名も知らぬ女生徒が立っていた。

「あ、あの!」
「僕に何か用かな?」
「よかったら、今日のランチの後にでも勉強を見て貰えないでしょうか?」
「なんだ、そんな事か。もちろん僕でよければもちろん力になるよ」
「マジで!?私も一緒にいい?」
「名前さんはだめ!!」

キンとした甲高い声は大広間に響いた。周りは一瞬静かになったがすぐに騒めきを取り戻すた。

「名前は僕の大切な友人なんだ。一緒じゃダメかな?」
「あ…そのごめんなさい。忘れてください」

そう言うと泣きそうな顔をしてその場を走り去ってしまった。名前は横で両頬をこれでもか、と膨らませ不機嫌コースだ。

「せっかく仲良くなれるかと思ったのに…。残念だなぁ」

名前はこの容姿の所為で嫉妬する奴らは、少なからずいる訳で。入学早々嫌がらせされていた事も有り、僕以外とは話も合わず友達の1人すら出来ていないのが現状だ。そんな事もあり名前はある事をきっかけに、前髪を伸ばし続け、かなり分厚い眼鏡で眼鏡の向こうにある大きくぱっちりとした二重の目は隠れてしまっている。それなりにコンプレックスを抱え、様々な生徒と仲良くしようとしているが未だに収穫はなしだ。

「今日の昼は、噂の一年生でも見つけに行こうかなぁ」
「くだらない。そんな暇があるなら少しは勉学に励んだらどう?さっきの女子みたいに」

「やーだよ」と言いながら皿に残っている物を掻き込むと「ごちそうさまでした」と手を合わせた。席を立ち扉へと向かっていくとそこには1人の人物が立っていた。確かこいつは前の合同授業の時に名前に殺意の眼差しを向けていた奴だ。そいつは気持ちの悪い笑顔を浮かべこちらへ向かってくる。足を止めると背中に衝撃が来た。

「いたっ!!なんでいきなり立ち止まるの?」

僕の背中から名前は顔を出すと共に、奴は目の前で歩みを止めた。なんの花かはわからないが花系統の香水が鼻につく。

「あの、私の事を覚えていますか?」
「あぁ、もちろんだよ。ちゃんと花びらは交換できたかな?」
「はい!あ、私は佐藤美織と言います。よろしくお願いします。トム先輩」
「わぁぁ!同じ日本人なの!?珍しいね!」

「…貴方も日本人なの?」

目の前の噂の彼女は本当に噂通りだった。本当に可愛い。そこらへんの女なんて蟻程度だ。だが、その大きいぱっちりとした目に私は映る事はなかった。だってその大きな目はリドルしか写ってないからだ。それにこの子は「トム先輩」と言っていた。眼鏡越しにリドルを見上げると、笑顔の下には不機嫌さが隠されている。リドルが不機嫌になると、とてもめんどくさいだよね。どうやって機嫌を直そうか。図書館で勉強しようと誘う?それとも気分転換にホグズミードに誘ってみる?うーん、どれも微妙だ。

「あ、ごめんね。聞いてなかった。」
「彼女は日本人だよ。」
「てか、本当に君かわいいね!噂通りでびっくりだよ。こんなスリムな体型どうやって維持してるの?」
「まだ話していたいけど、そろそろ授業に行かないと間に合わないから、ごめんね。ほら名前さっと行くよ」
「え、同じ学年なんですか!?」
「そうなの、私スリザリンの三年の名字名前って言うの。よかったら仲良くしてほしいな」

そう言って私は佐藤さんとは月とすっぽんぐらい差があるケアしてない手を差し出した。

16.01.08
22.05.17-修正・加筆-

「あ、ごめんね。聞いてなかった。」

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