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「#エロ」のBL小説を読む
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「静かに部屋で待っていろ」と言われて、奥の部屋に引っ込んだのはいいんだけれども、ここは特別面白い物もない。窓の外を覗いて空を見上げても普通の空どころかなぜか暗いまま。庭に目を落としても荒れ果てた木から木の葉が風に乗って舞っている。「はぁ、私の心もこんな感じよ。」と悲劇のヒロインの物真似をして遊んでいた。扉の開く音がし、振り向くと待ち望んでいた人物だった。

「話、おわったの?」
「あぁ。」
「なら、今度は私の番ね!

そう言うとリドルはため息を付きソファーに腰を下ろした。私はすかさず横に座りリドルの返事を聞く前に話し出した。

「セブルスに聞いたんだけど私って消えたんでしょ?それって多分死んでないと思うの。自分の事だもん、分かるもん。それとかわいい私を元の時代に戻してください。お願いします。リドルに頼むのは癪ですがどーかどーかお願いします。」

先程食べずに1つだけ残してたマカロンはリドルの口元に持っていき開かない口にぐいぐいと押しつけた。「賄賂です。」と言うと、マカロンは取り上げられリドルの手によって私の口に詰め込まれた。

「賄賂!受け取ってくれないと困るんですけど!」
「いらん。」
「はぁー。マカロンいらんとかマジですか。このカシュって食感がいいのに。」
「とりあえずお前が死んでる死んでないは別にして、まず戻り方とか調べる術はない。」
「ぇええぇええ…リドルなのに?」

その言葉にリドルの眉が微かにピクリと跳ね上がった。けど、やはり私の知ってるリドルは違うようで彼は「どうすることもできない」と冷たく呟いた。何故だか私は無性に広くなった背中に飛びつきたくなった。私は思いのままリドルの背中に飛びつくと彼はよろめくがしっかりと背中で受け止めてくれた。「離れろ」と低い声が部屋に響いたが気にすることなく首に回した腕をぎゅっと力をいれた。

「ねぇ!でかけよう!」
「嫌だ。出たくない」
「いーいーかーらー!ほら、早く行こう。」

リドルの痛い鉄のような拳が頭上から落ちてきた。頭上からつま先までビリリとした稲妻の様な間隔が襲ってきてその場に蹲ってしまった。前と違って随分痛いじゃん。「女の子に手を出していっけないんだー!」と負け惜しみを言うと彼はそんな私をフルシカトし、なにかを懸命にカリカリと羽根ペンを動かしている。舌打ちをしながら何か甘いものがないか制服のポケットの中身を全て探していると内胸ポケットに冷たい何かが当たった。ひんやりするそれを手に取るといつの日かメローピーさんがくれたロケットペンダントだった。そういえばこれリドルは受け取ってくれなかったんだよな。「リドル、これ覚えてる?」ペンダントをリドルに見せるとちらりとこちらを見るが覚えていないようで、また羊皮紙へと目が戻った。ペンダントを開くと起こった出来事に言葉がでなかった。

「リ、リ、リドル…。こここここれ」
「いい加減黙っていろ。今はいそ、が、し…」

手の上に乗っているペンダントは開くと眩いばかりに7色にきらきらと神々しく光っている。目が痛くなるぐらいに。

「怖い怖い怖い怖い。なにこれ。え、え、やだ、リドルにあげる。はい!」
「いらん。そんな訳の分からぬ物体持ってくるな!」
「ねぇ、これ私のかわいい手、大丈夫?燃えてない?ねぇ。光に包まれてやばいんだけど。」
「まて、動くな!」

リドルは杖を私に向け、猫のように威嚇している。そういえば昔から知らないものや理解出来ないものはリドル嫌いだったなぁ。けど、せめて助けてくれないかな。私だって怖いんだよ!

「これ、閉めて大丈夫かな?」
「………」

今のリドルは使い物にならないと即座に判断した私は、片方の手で光の中心にあるペンダントの蓋に手を伸ばした。ゆっくりと指先が光に侵入していく。あれ、あったかい。なんか気持ちいい。パタリと蓋を閉めると同時に7色の光も消え失せたみたい。はーっと安堵するとペンダントと私の手の平の間に小さな羊皮紙の欠片があることに気づきそれを手に取る。

汝らを絆す記憶なるもの捧げよ

えーと、これは。どういう意味なんだろう。リドルと顔を見合わせればリドルは顎に手を置きなにやら考えているようだ。

「とりあえず、リドル。」

お菓子ちょうだい。

***


屋敷しもべに丁寧にお礼を言うと、彼女から出来たてのシフォンケーキを受け取った。ふんわりといい匂い。紅茶があったらなぁ。考えていると2人目の屋敷しもべが紅茶を持ってきてくれた。握手しながらバイバイすると、彼女らは返してはくれなかったけど、恥ずかしそうに扉をしめた。

「ほら、リドル。いい匂いでしょ。」

まだリドルはあの羊皮紙の切れ端と睨めっこをしているようだ。シフォンをちぎり、リドルの口元へ持っていくと羊皮紙からは目を離さずモグモグと咀嚼している。なんか、昔みたいだな。それを私もパクリと食べるとほんのり優しい味が口全体に広がった。

「ふぁあああああ。何これ!?美味しい!美味しすぎるよ!!」
「名前、」
「なに?」
「この切れ端だが、おそらくあの花びらの事じゃないか。」
「花びらー?」
「随分昔、花びらを交換する授業があったであろう。」
「……あぁ。そういえばそうだったかも。まって。あるある」

私はパスケースを取り出すとその中から久々に見る虹色の花びらを取り出す。「これでしょ?」とリドルに見せると、「ペンダントを渡せ」と言われ大人しく渡した。やはりペンダントを開けると眩い光が零れ始めた。リドルはその光に私の花びらをそっとひらひら落とすと光は今までの半分ぐらいに弱まった。

「当たりっぽいな。」
「まじで!?ならさっさとリドルもあの花びら入れてよ!」
「………」

リドルは斜め下を見ながら少し気まずそうな顔をしていた。嫌な予感がする…。「ねぇ…花びらは?まさか捨てた!?無くした!?それとも燃やした!?」ずいっとリドルの顔に近づけばリドルは目を逸らし私を頬を叩いた。

「え、え!なんで!痛い!てかリドル。在学中よりも私の事よく叩くよね!?なんで!?」
「このペンダントはどうしたんだ。」

わざと話題を変えるリドルに私は乗るように答えた。

「あれはね、私が…その…ほら…Sさんから、殺られた時にリドルのお母さんに会ったって言ってたじゃない。その時に貰ったものなの」

クソほどの興味も無さそうにリドルは紅茶に口を付けていた。

「てか、それよりまじで花びらは?怒んないから言ってみ。」

リドルは重々しく紅茶を飲み終わるとカップをソーサーに置いた。

「花びらはホグワーツだ。必要の部屋にある。」
「ぇええええ!なんで必要の部屋!?」とは聞いてほしくない顔をしているから敢えて聞かないことにした。私、空気読める偉い子。

「どうやって取りに行くの?これ多分リドルの花びらも入れないとダメなやつだよね。」

「どうするの?」と言うとリドル顰め面で「お前が取りにいけ。」とか言い始めたから2度見してしまった。

「なんで私が!?知ってる?今のホグワーツには…えとミネミバ?とか言う少しおっかない先生がいて目が怖いんだよ!?」
「もし!もし、あれがお前の時代へ帰れるものだったらどうする。可能性はある。」
「えー…けど、行けたとしてもダンブルドア教授に何故いるの?みたいな目で見られたらなんて言うのよ。」
「なんとでもなる。それにさっさと貴様には私の前から消えて欲しいからな。」

「セブルスを呼ぶから待ってろ。」と部屋を出るリドルの背中をただ見つめていた。リドルが私に消えて欲しいだなんて…。そんなの…あまりにも…。「まぁ、何回も言われ慣れてるからいいけど。さ、シフォン食べてしまう。」と私は手づかみで口に押し込んだ。

20.10.20
22.05.24-修正・加筆-

「賄賂です。」

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