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暴れ柳がメキメキと、いつもと違う音をあげている。私の部屋からは、暴れ柳が悠々と見えるのだ。実はと言うと昼下がりにのんびりと暴れ柳で遊ぶ小鳥を眺めながらお茶するのが好きだったりする。その後、リドルが私を見て、避けるようにリドルは逃げ出した。少し悲しかったな。部屋に戻って少し拗ねていたらいつの間にか寝ていたようだ。変な寝方をしていたのか、首が痛いと、ため息をつきベットで無造作に転がっている眼鏡を深々とかけ。水を1口含んだ。冷たい水が喉を通り、体の下へと通過していくこの感覚がくすぐったい。それを何度も繰り返してると「ああ、生きてるんだなぁ」と実感できる。それにしても、さっきから暴れ柳はいつも違う音をあげている。窓に近づき暴れ柳を見下ろすとなんと、魔法戦争が繰り広げられていたのだ。眼鏡を下げ、目を凝らした。「あれはリドルじゃない!!相手は…」じと見つめると、佐藤さん、?らしき人物。あれ?佐藤さん?なのかな。あれは。あんなに髪短かっただろうか。こんな所で見ている場合じゃないと部屋を飛び出した。暴れ柳までもう1歩と言うところで暴れ柳を見守る2人がリドルたちをこそこそと覗いている。

「セブルス、レギュ!」
「名前先輩!」
「なにこれ!どういう状況!?」

レギュから話を聞こうとしたとき、背後の壁に魔法が当たり壁の塊が私の頬を掠めていった。頬から鮮血が伝ってき、血の気が引いていく感覚なんて久々だ。レギュは治癒魔法を私に用いりながら、状況を説明してくれた。2人が騒音を聞きつけ来てみたら、このとおりだったらしく、直接の原因には心当たりがなさそうだ。セブルスは黙ってその現場をただただ、見ているだけだ。とにかくどうにかしないと、と私は大きく息を吸い込むと「やめてーーーーー!!!!」と叫んだのだ。ピクリと反応を見せたリドルはこちらを向いた。ふ、と攻撃が止まったことに安堵していると、リドルはこちらにいきなり走り出してきた。佐藤さんを見るとものすごい眼力で杖を振り下ろした瞬間だった。リドルに目を向けると、あのリドルが泣きそうな顔をしていた。あぁ、ダメだ。あの顔をさせては。その顔をさせないために私は…。セブルスとレギュが私を覗きこんでいる。私は倒れたのかもしれない。じゃなければ、この2人が私をこんな風に覗き込めるはずないもの。けど、どうして?私が倒れたのに、何故リドルは私を覗き込んで来ないの?ねぇ、リドル。リドル。私を見てよ。倒れたのよ。お腹がじんわりとするの。私、怪我をしているみたいなの。お願いよ。お願い。私を見て。私の側に来て。

***



急に意識がはっきりして飛び起きると、セブルスもレギュもリドルも誰もいなかった。どんよりとした、どこかの部屋にいるみたいだ。酷く懐かしい匂いがする。ここはどこなんだろう。先程まで裏庭にいたはずなのに。リドルはどうなったのだろうか。じんわりと痛かった私のお腹は、今は何ともなかった。とにかくリドルの所に戻らないと。音がしない様に静かに、重々しい扉を開けると静かな空間に扉の軋む音だけが響いた。それがなんだか不気味で背筋がゾクリとした。重い足を片足だけ出すと、左右を確認し、またもう1歩とゆっくりではあるが歩き出した。長い廊下にまだ続くのか、とうんざりしてきた。たくさんある扉は、どれも鍵がして有り、開かない。目的地さえあればどうにか頑張れるんだけどなぁ。何処に行けばいいのかも分からない。お腹から、ぐぅとへたり込む様な音が静かにした。そうか、そうだよね。私、朝からなにも食べてないもん。目の前には、地下へと続く階段がある。その階段に差し掛かった時、階段の奥からはとてもおいしそうな匂いが漂ってきた。その匂いにつられるかの様に階段の下へと降りた。光から漏れる木製の扉をゆっくりと開けると、屋敷しもべ達がたくさんの料理をこしらえていた。皆んなバタバタと忙しそうだ。手前の調理台に並べられた料理を皿ごと持つとそっと、ここを後にした。急いで階段を駆け上がりすぐに左通路の小部屋を発見し、ノブを回すと難なく開いた。中に入りその場に座り込むと盛大に息を吐いた。

「あぁー、ドキドキした。盗み?いや、盗みじゃない。ちゃんと返すよ。いつか返す。だから盗みじゃない。ごめんなさい。ごめんなさい。いただきます。」

手を合わせ、いざ食べようとするもナイフもフォークも箸もないことに気付き絶望した。あちらこちらを触った手で食べるなんて絶対に無理!けど、けどもし料理を持ってきたのがバレて、しもべさんたちが騒いでいるならフォークなんて取りにいけない。どうしよう。何故だ、何故忘れてきた…!涙が出そうになるのをグッと堪えた。その瞬間に首筋に冷たいなにかが当たったのだ。私の背後からゆっくりと息をのむ音が鮮明に聞こえてきた。

「貴様は誰だ。ここでなにをしている。」

酷く冷たい低い声。こういう声の持ち主は大抵残虐なのだ。知っている。下手に答えれば命はないと言うのも分かる。

「わ、たしは、ただここにまよ、いこんだだけ…で…ここがど、こなのかも…しら…ない」
「魔力を感じない。どうやって結界を解いて入ってきた。」
「し、らない。知りませ、ん。」

喉が乾燥しうまく声がでない。心臓は今にも破裂寸前だ。どうにかしないと。どうにかしないと。けど、どうしたら…

「知らないだと?ならば貴様には用はない?」
「や、やめて!気付いたらここにいたの!」
「貴様のような小娘が難なく入れる所ではない。」
「ほん、とに!なにもしらないの!」

背後で動く気配を感じると、私の恐怖と言う感情は限界を超えてしまった。じわりと涙がこみ上げき、ぽろりぽろりと溢れ出した。その涙が料理の上にぽつぽつと降り掛かっている。それが引き金となったかは、わからないが急に怖くなって泣き叫んでしまったのだ。

「…っ、う…リドルぅ…こわいよ。やだよ。知らない人に殺されるよ。リドル、リドル、どこ。たすけて。…っうぁ…。」

今まで首筋に押し付けられていた物は、多分杖だろう。その杖に何故か少し余裕ができたかのように思えた。今だ!言わんばかりに、目の前に配置してあるベッドの下に潜り込んだ。。ベッドの下からは、声の主の足元が隠れているローブだけが見える。けど何故かその人は、その場から微動だにしない。どれくらい経ったか分からないけど、大分落ち着いてきた。できる限り呼吸音がしない様、息を整えると微動だにしないこの人をどうしようと考えた。

「この料理はなんだ」
「い、や、あの。その。お腹がすいていたから屋敷しもべさんたちのところから…」
「盗んだと」
「や!違いま…あだぁ!」

否定しようと顔を上げたらベッドに頭を思い切り打ってしまった。それにしてもこれだけの勢いで頭をぶつけてもピクリともしないこのベットは誰か寝ているのだろうか。結構いたかったぞ。

「でてこい。なにもしない。」
「いや!で、す。怖いのでいいです。ほっ、といてください。私は、その、勝手に誰も見つからず出ていきますので。」
「…………そうか」

男はローブを引き摺り引りながらに外に出ていった。暫くしてもう大丈夫かな、とベッドから這い出ようとした時「名前?いるの?」と小部屋に声が響いたのだ。


16.11.30
22.05.23-修正・加筆-

お腹がじんわりとするの。

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