×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

気付くはずはないと思ってた。気付いてはいけないはずだった。だってこんな感情僕には必要もないしい余計なものだから。前から思ってたいたけど人間には感情なんて物はいらないのではと。感情がなかったら、泣くこともないし、傷付きもしない。その方が躊躇わずに殺せるし失うものもない。神がいるなら何故こんな、こんな余計な物をつけたのだろうか。
その所為で名前に一方的に物を言ってしまった。名前は僕が機嫌が悪いときにか限って何故か我儘を言ってくる。言った事に後悔はしてないが、心がモヤモヤとしてすごく迷惑だった。僕は間違ったことは言っていないはずなのに、この罪悪感みたいな感情は、なんなんだ。例え名前の大きな綺麗な瞳から涙が零れだしても僕は絶対にこんな気持ちになったりはしないと、いつも心の中で思っていた。けど、やっぱり名前が息をしていなかったあの時、何も考えられなくて、頭が真っ白になって、1番初めに思いついたのは「ああ、佐藤殺さなきゃな」って。けど、動く事も出来なかった。ピクリともしない名前を見たら「名前が壊れないようにどこかに連れていかなきゃ」とただ、そう思ったんだ。だってまだ暖かいし、もしかしたらただ眠っているだけなのかも知れない。こんな感情も初めてだった。生まれてこの方、涙なんてものは僕に備わっているのだろうか、とずっと考えていた。全く泣いた事がないからだ(あまりじゃなくて絶対にだ)。名前に初めて泣かされ、こんなに引き裂くようなつらい思いをするのなら感情なんて、やっぱりいらないと思った。ほかの奴らには感じさせられたことのない感情の名前は何なんだろうか、と1晩考えても答えなんて出なかった。
レギュラスが名前を庇った時にも、くだらない感情が僕を飲み込んだんだ。僕のこれから成そうとしてる事に、こんな感情は絶対にいらない。やはり名前は僕には必要がない。そう、絶対に。誰か名前なんか傍になんか置いてやるものか。名前は名前で勝手に平凡で好きな奴と生きていくのだろう。
あれから名前とは全くと言っていい程、会わなくなったし話すらしなくなった。ただ遠くから見るだけだ。僕の心はどんよりとした雲よりも重く不思議な気分で僕をイラつかせるには効果的だった。そう、まるで名前の生理前の時のようだ。生理前のイライラした名前はとてもからかいがいがあるんだ。思い出すと笑えてきた。ふと不思議と心が軽くなった。自分の情けなさと単純さに笑えてきた僕はいつもよりも強く寮の扉を開いた。ソファーには名前が本を読んでいたであろう格好で寝ていた。口は半開きで眼鏡はズレている。制服のネクタイはゆるゆるで本当にだらし無い。周りの生徒は見慣れた光景なのか、誰1人気にしていない。僕が歩き出した時名前の手から本が鈍い音を出し床に落ちた。その音に目を開けた名前はゆっくりと本を拾うと僕と目が合った。分厚いレンズ越しでも、名前が今どんな表情をしているのか手に取る様に分かる。今にも泣きそうな顔だ。泣いている名前を見て、傷付きたくない僕はその場から逃げ出したい衝動に駆られ、寮を飛び出すと何も考えずに目的地もなくひたすら歩いてた。
西側の寮の裏側には、このホグワーツで最も大きい暴れ柳が自生している。それ故、あまりここには誰も近付かないのだ。だが、暴れ柳の前には最も会いたくないあの女が立っていた。僕に気付くとニンマリと口角をあげた。

「あれ、トム先輩じゃないですか。お散歩ですか?」
「…やぁMs佐藤。随分と久しいね。こんな所で何をしているのかな?」
「お散歩ですよ。あ、そうだトム先輩。記憶戻ってよかったですね」
「君の口からそんな言葉が聞けると、思ってもいなかったよ」
「ねぇ、トム先輩」

佐藤は指先で自身の髪先を巻き付け口を開いた。

「実は私、名前先輩を殺さなきゃいけないんです。あの時もちゃんと殺したはずなのに、何故か生きていて叱られちゃいましたよ」
「どういう事かな」
「そのままですよ。私が名前先輩を殺さないと、私が殺されてしまうんです。」

佐藤は杖を取り出すと、顔の前に杖を立て目を見開くと呪文を唱えた。すぐさま杖を抜き「プロテゴ」と唱えると、放たれた魔法は暴れ柳の枝に跳ね返って行った。その威力は凄まじく枝は左右へと飛び散っている。枝の破片は佐藤にも降りかかるが気にしている余裕もないのか、すぐ様杖を振っている。少しでも反応が遅れていたら命はなかった。

「殺さないと殺されるの。…トム先輩に」

聞こえるか聞こえないかの小さな声。だがそれは僕の耳にははっきりと聞こえ動きが止まってしまった。しまった、と思うと同時に肩に痛みが走った。何度か力を入れ、支障がないかを確認するとすぐに体勢を持ち直した。その時「やめてーーーーー!!!!」名前の声が響いた。僕は振り向き名前に目がけ走り出し防御呪文を唱えるが、僕を追い越した呪文が名前へと向かっていった。

16.06.29
22.05.20-修正・加筆-
                       

(あまりじゃなくて絶対にだ)

prev | next