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レギュラスに用事があり彼を探していると、廊下のベンチには名前とレギュラスが肩を並べ座っていた。名前が泣いている事に少しばかり動揺を覚えた。名前が泣いている姿などあまり見た事がなかったからだ。泣き下を向く名前は、初めて見た時の名前と被ってしまった。初めて名前を見たのは、学年は違えど中庭や廊下、大広間見かける度に下を向いていた。そんな名前が顔を上げるのは、あの有名なリドルさんが隣にいる時だけだった。あの2人はホグワーツでは、すごく有名なのだ。才色兼備、眉目秀麗なトム・リドルの隣にブ女がいると。ブ女と言えど、前髪は長く眼鏡をしているから、顔なんぞ分からないではないか。よくそんな見解で容姿を馬鹿に出来たものだ。
たまに見かける名前をはよく僕みたいに嫌がらせをうけていた。今日もどうやら、やれているみたいだ。ただ僕には助ける義務もないし、面倒事は御免だと踵を返すと、目の前にはクソメガネがいた。

「なんだ、スニベリー。あんなブスが好きなのか?熱心に視線送って」
「ほっといてくれ。」
「否定しないって事はそうなのか?待ってなよ、スニベリー。僕があそこでやられてるブスにお前の想いを告げて来てやる。」
「残念だな、今日はお前の女騎士のリリーはいないから助けて貰えないな。」

しょうがない、今日は図書館に行かずに寮へ戻って大人しく同じ本を読もうと、無視を決め込んで歩き出した。後ろから四人の声が背中に突き刺さる。僕はこんな戯言もう慣れていると思ってたのにそれは建前でしかないのだ。手に持っていた本がいきなり炎をあげた。魔法とは不思議なものだ。火があがっているのに火傷をしない。本当に便利で不思議だ。手から炭になった本がバラバラと地面へと落ちていく。この本はリリーから貰った大切な本だった。後ろを向くと、ブラックが声を上げ笑っている。カッとなった僕はいつの間にか呪文を唱えていて、ブラックは後ろに吹っ飛びそれを見ていたルーピンが騒いでいる。その場からゆっくり立ち去ると、人気のない柱に背中を預け床に腰を下ろした。ローブが涙で濡れていて「あぁ、泣いているのか」と理解するのに少し時間がかかった。先程鐘が鳴った事もありこの場所は誰もいない。潔く声を出して泣くか思っていると、目の前には今にも折れそうな足とスカートが目に入ってきた。顔を上げると名前が真顔で立っていた。眼鏡や前髪でどんな顔をしているかわからないけど、雰囲気から察するに真顔なはずだ。名前がしゃがみこみ、「これ」と声を出した。名前の両手には真っ黒な燃カスの一部が乗っていた。これは、さっき燃えた本だ。僕はこいつまで嫌がらせをするのかと思い、睨みつけた。

「何の用だ。貴様まで僕を笑うのか。」
「ううん、これが燃えた時、あなたは悲しそうな顔をしていた。きっと大事な本だったでしょう」
「……っ、ほっといてくれ。今となってはもうそんな本はいらん。ゴミにしか過ぎない。」
「けど、あなたはあの人を攻撃呪文で気絶させたじゃない」
「もういいだろ、ほっといてくれ」
「もう1度だけ聞く。これは大事な物なの?」

どんどん名前の顔が僕の顔に近付いて来た。こんなにも顔を近付けられた事はなかったから、かなり動揺してしまった。なのに名前はまだ顔を近付けてくるのだ。咄嗟に手が伸び、僕の手が名前の顔を当たってしまった。カチャンと音を立てて眼鏡が床に落ちても名前は怯むことなく「どうなの?」と、聞いてきた。こいつは頭がおかしいのではないか?と思った。普通は「なにするのよ」とか「痛いじゃない」とかあってもおかしくない。「すまない」と謝ろうと名前を見ると、とても綺麗な目が姿を表していたのだ。僕は息を呑むと途端に、恥ずかしくなり顔を背けた。

「……大事なものにはかわり、ない、」
「そう、やっぱり大事なものなのね。」

「ここで少し待ってて」と名前はどこかへと走り去ってしまった。待っている義理などないのだが、僕は静かに本だった物を見つめ底から動かなかった。暫くすると廊下の向こうから名前の声が響いてきた。

「…はあ?知らないし!とにかく急用なのよ。」

誰かと話しながら姿を表すと、名前の後ろにはあのリドルさんも姿を現した。名前は僕を指差すと小走りでかけ寄り「お待たせ、」と耳に長い髪をかけた。

「あのね、この本なんだけ元に戻して」
「………名前?これは本じゃなくて燃えカスと言うんだよ。」
「戻せるでしょ?」
「僕はこの通り勉学に忙しいんだ。こんなものを見せるために僕を図書室から連れ出したの?」
「この本はねそこの、えと黒髪くんの大事な本だったんだけど、呪文に失敗した私が燃やしちゃったから…」
「確か1年のセブルス・スネイプだね。今回はこのバカが迷惑をかけたみたいだね。僕からも謝るよ。すまないね。お礼に本を戻してあげるよ。」

本の燃えカスに杖を向けると、どんどん時間が巻き戻るように燃えカスから本へと戻っていったのだ。「どうぞ」と手渡された本は僕が傷を付けた所まで、なにからなにまで元通りになっていた。

「またこのバカがなにかしたらすぐに言って来て。ほんの些細なことでもね」
「よかったね!元に戻って。さすがリドル。」

と名前は落ちていた眼鏡を拾い上げ、器用に前髪の下へとかけた。先に歩き出したリドルさんの背中目がけ飛び乗れば、リドルさんは振り落とし頭に一撃決め込むと、動かない名前の後ろ襟を掴んで引き摺られていく。「名前、ありがとう」と叫ぼうとすると、名前を知っているはずなのに、本人に名前を聞いていないのにその名前を口にするのは、と恥ずかしくなった。そんな僕を引き摺られ見ていた名前は口を囲う様に手をあて「名前って言うのー!!!」と声を張り上げながら曲がり角に消えて言ってしまった。恥ずかしさもなく、引き摺られながら自分の名前を叫ぶ名前を見て久しぶりに自然と笑えたのだ。
そんな事を思い出していると、レギュラスの名前を見る目は、顔は、優しそうだ。名前は、人を自然に笑わせる力でもあるのかもしれない。レギュラスの隣にいる名前とレギュラスを見て僕はまた笑ったんだ。


??-修正・加筆-

「どうぞ」

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