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「あの先輩方、僕昨日寝ないで考えたんですけどシンプルに言ってみるのはどうでしょうか。」
「だが、どうやって杖を奪うのだ。」

昼食も仲良く3人で座って作戦会議を繰り広げる。とにかく、まずリドルの記憶を戻すには奪った本人の杖がいること。その中にリドルの記憶はあると言う。記憶修正呪文といっても、完全に消すことできないらしい。修正呪文は記憶を消すんじゃなくて奪うことしかできない。とセブルスに教えて貰った。けれど、その佐藤さんの杖をどうやって奪うかが問題なのだ。三人よれば文殊のなんとかって凄いと思う。1人では考え付かなかった事ばかりだ。拳をポンと叩いたレギュが何かを思いついたようだった。

「逆手に取ればいいんですよ。あたかもリドルさんの記憶が戻ったかのように名前先輩はリドルさんと一緒にいたらいいんです。多分それをみたMs佐藤は怒りに荒れ狂うはずです。もしかしたら名前先輩が1人の時を狙ってくるかと思うんです。けどそれは絶好のチャンスなんです。油断させといて相手が杖を出した瞬間に杖を奪えば」
「だが、佐藤が名前を狙ってくるのは確実とは言えないぞ。」
「私はいいんだけどその作戦ってさ…」
「……はい。リドルさんにも協力してもらうほかありません。」
「無理だよ!あのリドルが協力するわけないじゃん!!!今のリドルってあれだよ?優等生ぶってるし心の中ではみんなを見下してるやつだから!」
「それはもう、名前先輩に全力で頑張って貰うしか道はないですね」
「無理無理。」
「名前はリドルさんのことをよく知ってるだろう。どう挑発するかも、どうプライドを傷つけるかも。」
「……セブルス」
「そうと決まれば早くリドルさんに協力を仰ぎましょう。どこにいるんでしょうかね。」
「図書室だよ。多分今のリドルは自身に不信感を持ってるはず。それはリドルにとって邪魔でしかないからね。それを誰にも相談できないリドルは自分でどうにかするしかないから、必ず図書室に行って文献漁ってるの」
「流石ですね。僕はそろそろ戻らないといけないので。ではまた夕食時にでも」

お礼を言うとセブルスも寮へと帰るという。2人と別れ私は重い足で図書室へと向かった。セブルスが言ってたプライドの傷付け方、ね。確かに私は知っている。けど、そんな助言をしてくれたセブルスには悪いけど、そのプライドを傷付けてどう協力に持ち込めばいいか分からない。下手したら殺されるかも…。だめだ。ネガティブになってしまっては。モヤモヤした気持ちも抱えながらも、図書室の扉をあけると本のいい匂いがふんわりと鼻をついてきた。図書室1番奥の右側の席に座るリドルは難しい顔をしていた。

「隣、いいかしら」
「…やぁ、Ms名字。生憎、他の席も空いてるんじゃないか。今すごく忙しくて話を出来る程暇じゃないんだ。」

本から目を離さないで話すリドルは本当にリドルらしい。初めて出会った時もそうだった。

「すごく大事な話よ。リドルに関する事」

ピクリと眉を上げリドルは初めて私と目を合わせた。なんだか久しぶりすぎて泣きそうだ。

「リドル、今あなたは気付いてるかもしれないけど記憶を奪われてるの」
「やっぱりね。そうなんじゃないかって思ってた。確信はなかったけど」
「リドルも記憶を取り戻したいでしょ」
「それはもちろんだよ。Ms名字。ただ、今の僕には誰に取られたかも分からない状況だ。」
「それがね、私知ってるの。取った人を。だから協力しない?」
「…例えば君が僕に恋心を抱いているとしよう。その感情がすごく邪魔で僕が自ら修正呪文を使ったとしよう。そしたら君は嘘をついていることになる。嘘をついて僕に近寄って騙そうとしているとも考えられる。」
「…これ、覚えてる?」
私はポケットから一年前の花びらをリドルに見せた。リドルと交換してから虹色に輝いている花びらだ。これはお守りとしてずっと身につけてるものだ。

「もちろん、覚えているよ。」
「この花びら、リドルから貰ったやつなんだよ。」

花びらからはリドルの情報が出ていた。情報がでるなんて最初はびっくりした。その時の私と同じ様な顔でリドルは信じられない、という顔で花びらを凝視していた。そう、この虹色は唯一無二の相手でしか輝かない花びらなのだ。頭の回転が速いリドルはもう察しがついていると思う。

「確かに僕のだ。僕は君をそんなに信頼していたのか。だけど、これだけじゃ信じられない。」
「リドルともあろう人が他人に忘却呪文唱えられて、よく平気でいられるね。私の知ってるリドルならプライドへし折られてその人のこと殺しに行くんじゃないかって程だだったのに」
「へぇ、言うじゃないか。君はほんとに僕と親しい間柄にいたんだね。とても挑発の仕方も上手だ。」
「協力、してくれるわよね。」
「もちろんだよ。Ms名字」
「あ、ちなみに私の事は名前で呼んでた。」
「名前、か」

リドルが私の名前を呼んでくれて私は緊張の糸が途切れたのか、泣いてしまった。リドルはいつもやってくれたように頭を撫でてくれた。あぁ、やっぱり私はリドルじゃないダメなのかも知れない。涙をグッと堪え作戦のあらましをリドルに話した。どうやら佐藤さんを憎き相手と認証したようだ。リドルはこう見えて演技がとても上手いから佐藤さんにも気付かれないだろう。この後は2年との合同授業だ。「早速、騙しに行くとしようか」とリドルが腕を引っ張てくれた。そんな事に一喜一憂してまた涙が溢れそうだった。途中であったセブルスは私の横にいるリドルを見るとふと笑って頷いてくれた。3人で席に座ると、他愛もない話を沢山してそれはとても幸せな時間だった。
それからのリドルは本当に完璧だった。私には違いは分かるけど傍から見れば前の私たちに戻ったかのように見えているであろう。今日は久々のリドルと一緒の夕食だ。胸がドキドキしてうまく呼吸が出来なかった。リドルは相変わらず人参を横にどかしている。それをカモフラージュするためか、ほかの野菜をわざと残して人参に被せて「お腹いっぱいだよ」という。私はパンナコッタを口に運ぶと幸せな味が口いっぱいに広がる。セブルスにも味合わせようとスプーンでパンナコッタをすくい、本を読むセブルスに運んだ。またもや、ぱくんと食べてくれた。その瞬間リドルが私の両頬を手でがしりと掴むとメキメキという音共に、私の頬に激痛が走ったのだ。

「痛い!なにするの!?リドルのくせに!!」
「君はいつもいろんな奴にあんな事をしてるの?」

セブルスはまた始まったという顔をし、本と視線を合わせ始めた。

「やってないよ!やった事あるのはリドルとセブルスだけだよ!!ただこれからレギュにもやろうと思ってます」
「あの、すみません、遅れてしまって。」

レギュは肩で息をしながらセブルスの横に座った。リドルは小さく舌打ちをした後、緩んだネクタイをキュッと閉めて何事もなかったかのように姿勢を正した。私は痛いすぎる頬を撫でながらレギュを見た。

「遅かったから心配ひたよ。」
「すみません、授業が長引いてしまっていて。あの初めまして。レギュラス・ブラックと言います。」
「僕はトム・リドルだ。それにしてもブラックか。グリフィンドールの馬鹿と兄弟か。」
「え!!まじで!?って言ってもグリフィンドールのブラックを知らないけど」
「ええ、シリウス・ブラックは僕の愚兄です。」
「愚兄って…」
「リドルさん、頑張ってくださいね。僕応援してますから。」
「レギュラスか、ありがとう。覚えておくよ」
「あー!トムせんぱーい!」
「やぁ、Ms佐藤。」
「トム先輩!昼食は一緒にっていったじゃないですか!」
「あれ?そうだったかな?ごめんね。忘れてたみたいだ。」
「あの、トム先輩。なんで名前先輩がいるんですか?」
「名前?なんでって、いつも僕の横にいるから、名前が居てもなんら不思議じゃないと思うけど。」
「…っ、なんでよ。」
「佐藤さん?」

佐藤さんは「失礼します」と踵を返し去っていってしまった。けれど、あの佐藤さんの顔色を見れば分かった。彼女は相当焦ってると。これから佐藤さんがどう出るか分からないけど、自分を守る準備だけはしっかりとしないといけない。

「とりあえず、あの女はしっかりと騙された様だね。」
「うん!これで一歩前進したと思いたい。」

軽く食事を終え、セブルスとレギュの2人と別れると私はリドルの後について行った。校舎の裏にある湖の畔でリドルは徐に振り返ると「なんでついてくるの?」と腰を下ろした。

「あ、そうだね。いつもの癖でついてきちゃった」
「…まぁ、あの女がいつ何処で僕らを見ているか分からないし、一緒にいるべきなのかもしれない」
「…リドル」
「僕は読みたい本があるんだ。君が僕と親しい間柄ならどうすべきかわかるよね」

私は生唾を飲み込むと口を閉じた。静かなこの場所はただ、リドルが頁を捲る音しか聞こえてこない。こうやって黙って2人でいると、よく2人で昼寝した時の事を思い出してしまう。私はリドルの横で馬鹿みたいに口を開けて寝ていた。懐かしい空気に私の瞼はどんどん重くなっていった。
目を覚ますと、世界は横を向いていた。ゆっくりと体を起こすと、どうやらリドルの太ももに頭を預けていたらしい。リドルはと言うと、なんと珍しい。こんな人の目がある所でリドルは気持ちよさそうに寝ている。起こさないように、静かにリドルの顔を見つめた。寝顔を見れば、鼻奥がツンし、目は涙で潤ってきた。泣くな、と下唇を噛むがそれは全く効果がなかった。涙は私の頬をゆっくりと伝い、顎下で1つになるとそのまま重力に習い地面へと落ちて行った。何故涙が出るのか分からない。ただひたすらに泣きたくなったのだ。「そんなに噛むと、唇がちぎれるよ」リドルの手が私の唇を触る、ふいに力が抜けた。下唇を親指で優しく触っている。

「そんなに痛くなかったから…」
「まさか、君の前で寝てしまうだなんて…。相当疲れていたのかもしれないな」

軽く伸びをするリドルに、私は「初めてのおサボりだね。」と言うと持っていた本をその場に落とし固まってしまった。

16.03.15
22.05.18-加筆-

「初めてのおサボりだね。」

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