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何故かもう明日には4年生に上がる時期になってしまった。あれからセブルスとは全く会えなかった。理由は私は夏風邪を引いて2週間寝込んでいたこと。その間にホグワーツ生は夏休みに突入していてセブルスも実家に帰ってしまっていた。1人で考えてもいい案は何一つ出てこない。頭をフル回転しながらどうしたものかと悩む日々だった。夏風邪をひいたのは3日後に夏休みに入る頃だった為に、先生方はどうせもうすぐ長期休みだし、もう実家に送還しようと言われ皆よりも早くお休みを頂けた。
長く短い夏休みは今日までだ。私は面倒がらずにホグワーツに帰る支度をしながら忘れ物はないかと悩みトランクを閉めた。「あ、やばい」忘れ去られた古い魔法と呪文の本を買うのを忘れてしまった。どうしよう、わざわざ横丁まで行くのは面倒だ。でも…買わない訳には行かないし…しょうがないな…。ワンピースに腕を通しポシェットに、杖を突っ込むと暖炉に入った。久々に横丁に来るとやっぱり新入生と思われる子達ですごく賑わっていた。人ごみは酔ってしまう。さっさと買って帰ろう。相変わらず書店の中はすごい混みようで中に入ると左右正面様々な所から人に押されまくる。やっとの思いで購入し、店を出るとゴロゴロと曇り空が広がっており生憎、私は防水呪文など覚えていないのでぽつぽつと降り出す雨の中知らないお店の軒下で雨宿りをするハメになった。のんびりと雨宿りをしていると、段々と雨も強まっていき、辺りはあれだけ人がいたのに誰1人としてと歩いてる者はいなかった。そこに男の子が走って私のいる軒下に入ってきた。真っ黒な衣装に身を包み、なんと端正な顔つきだろうか。黒い髪先から雨が滴っていて、水も滴るなんとかってやつだ。雷が鳴り始め、より一層強く雨が屋根を叩きつけた。

「困りましたね、さっきまでは晴れていたのに」

凛とした声が、煩い雨音の中でもやけにはっきりと聞こえてきた。顔を向けるとその男の子がどうやら言葉を発したみたいだった。

「そうだね、早く帰りたかったのに。お互いに困ったものです」
「僕も同じです。もっと早く新学期の準備をしとくんだったと今、後悔してるところです。」
「新学期ってことはホグワーツの?」
「えぇ、今年からホグワーツに入学するんです。見たところあなたもホグワーツ生ですか?」
「うん、ホグワーツだよ。といっても4年生なんだけど。」
「そうだったんですか。失礼しました。見たところ僕と同じ新入生のような気がしたもので、気軽に話しかけてすみません」
「いいの!私日本人だし周りからするととても幼く見えるもの。」

雨の中、風が吹き私の眼鏡に水滴が飛んできて何も見えなくなってしまった。眼鏡を外したのはいいけど、生憎水滴を拭き取るような物は私は持っていなかった。すると横から「よかったら」とハンカチを差し出されて「…ありがとう」と微笑んだ。

「綺麗な笑顔ですね。」

と言われたことのない言葉を言われ、昔のことが頭の中でフラッシュバックとして蘇ってきた。すぐに眼鏡をかけると男の子は勿体無いと言わないばかりのような顔をしていた。

「あの、このハンカチ明日ちゃんと洗濯して返すね。ホグワーツで会えたらだけど」
「………。では、お願いしますね。」

会話はそこで途切れてしまった。こんなに静かな状況になってしまうと私の頭の中を支配するのはまたしてもリドルだった。リドルのことがぐるぐると脳内を駆け巡る。

「あの、なにかお悩みなんですか?」
「っ、ごめんなさい。なんでもないの」
「よかったら話してみませんか?その頃には多分雨も止んでいるはずです。」

セブルスとも会えない中どうしても誰かに話を聞いて欲しかった私は、出会ったばかりのこの子に少しだけ、少しだけならば愚痴的なものを聞いてもらおうと思い口を開いた。

「もしさ君の大事な友達がさ、君のことをすっぽりと忘れてしまったらどうする?」
「…」
「その大事な友人に言い寄ってる異性の子がいて、君の記憶を忘れた時に友人に言いよってくるの。」
「それは実体験ですか?」
「い、いいえ、友達の事よ。」
「そうですか。僕なら最初はなぜ記憶が無くなったのか、原因を調べると思います。そういった事になった原因を知らないのですか?」
「その異性の子と目が合った時に何故かわからないけど、いろんな映像が飛び込んできたの。大事な友人に杖を向けてたりとか暗い部屋で、知らない女子がいてその子を眩い光が包んでそこにはその女の子はいなくて変わりにその異性の子がいたっていう」
「なるほど…。まず、その映像から言えることは友人に向かって杖を向けていたんですね。確信ではないですけど、多分記憶に関する呪文を使ったのかもしれませんね。」
「それって開心術って言うんだっけ。でもそんな呪文私は全く知らないの」
「詳しくは分からないですけどもしかしたら上級呪文なのかもしれませんね。…ふふ、まるで自分のことの様に話されますね。」
「え!ち、違うからね!」
「えぇ、そうでしたね。記憶を消すことくらい魔法では容易いです。ただ外見を変えるとなるとすごく難しいことなんです。僕としてはそちらの方が気になります。」
「あ、もう雨が上がっちゃったね。ごめんねこんな話。また学校で会うことがあるかもしれないしその時は声かけてね。ハンカチも返さなきゃだから」
「…もしよかったらなんですけど、その悩み事、僕も手伝ってもいいですか?」
なんという報酬だろうか。セブルスは相談に乗ってくれるとは分からないけど、相談相手が少しでも増えるとすごく嬉しい。願ったり叶ったりだ。
「ほんとに?いいの!?」
「はい、もちろんです。今更ですけど名前聞いてもいいですか?」
「そういえば自己紹介がまだだったね。私は名字名前。よろしくね」
「僕はレギュラス・ブラックです。こちらこそよろしくお願いします」

16.03.14
22.05.17-修正・加筆-

「綺麗な笑顔ですね。」

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