オリーブ・オーカー


portrait

 ルニ・トワゾ歌劇学園三年。
 身体での表現を得意とするクラス、クーデールに所属し、男役女役どちらもそつなく演じるピーコックとして舞台に立つ。
 ただ、名のある役として抜擢される際は主人公ではなく、そのほとんどが主演級のナイチンゲール、すなわち悪役である。歌こそ不得手であるが、彼の身体全体を使った狂気の演技は、観ている者を呑み込むほどの迫力を持つ。
 現在のルニ・トワゾで悪役の演技をさせたなら、彼の右に出る者はいないだろう。
 彼自身の性格としては、普段悪役を演じることが多いとはとても思えないほどに面倒見がよく、下級生からの人気が高い。多少軽薄な言動が目立つ部分もあるが、だからといって問題行動を起こすことはほぼない。
 また、オーカー家は著名な声楽一家である。
 彼の兄に当たるオールド・オーカーは世界的にも有名なシンガーであった。
 常に兄と比較されてきたオリーブは、自身の歌に致命的なコンプレックスを持っている。また、声に価値を見出すオーカー家の中で、ココリコのクラスに入れなかったオリーブへの風当たりは厳しいらしかった。
 彼はよく、語学の勉強に励んでは世界の風景を写した写真集を眺めている。学園を卒業したら、きっと別の国へと渡るのだろう。
 それもまた良い。
 この学園では誰も、彼のそんな行いを「悪」と呼ぶ者はいないのだから。

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