ムラサキ


portrait

 ルニ・トワゾ歌劇学園卒業生。元アトモスクラス。
 学生時代から大柄で手足が他人に比べて大きいことが特徴で、その存在感ゆえにロワゾでは主にレイヴン、ナイチンゲール・レイヴンを務めている、劇団ロワゾを代表する役者の一人。
 生まれも育ちもローレアだが、本名であるリラ・クラレットではなく単に「ムラサキ」という名を芸名として名乗っている。理由としてはリラという可憐な名前と自分の容姿がイメージとして合わないから、ということらしいが、彼自身己のことをあまり語りたがらない性格のため、その真意のほどは定かではない。
 オウカ・オミナエシとはルニ・トワゾ時代からの同輩で、現在でも共演することが多い。その高身長と体格の良さ、また自身の横柄な性格から友人ができなかった当時のムラサキは、剣舞や歌舞伎等の日本文化に興味を持ち、それらに触れることで自らの孤独を癒していたが、歌舞伎界で著名なオウカ・オミナエシをそうとは知らずに助けたことがあった。それはまだローレアに不慣れであったオウカを狙ったスリを捻りあげるという手荒なものであったが、オウカはそんなムラサキに礼を言うより先に「お前、良い体幹だね」と言って、ルニ・トワゾに引っ張っていった。このとき、ムラサキは心底驚いたという。この世に自分よりも勝手な人間がいるとは、と。
 前述した通り、ムラサキは存在感のある役者で、舞台に立っていれば観客は否が応でも彼が目に付く。そのために主演を任されることが多い。しかしながら裏を返せばそれは、主演以外は任せられない役者ということでもある。つまり彼は、空気の震え一つすら、下手な演技をすることは許されない、ということだ。一度でも失態を犯せば焼け落ちる綱の上をつま先立ちしているような彼であるが、存外その緊張感を楽しんでもいるらしく、現状、綱渡りを怖がるような生半可な役者にはその綱を渡らせようともしない様子である。
 ちなみに、オウカをはじめとするマドンナやレディの沽券に関わるため、ムラサキの年齢もまた非公開である。