アルマンド・ダイアモンド


portrait

 劇団ロワゾ所属の演出家。現在の劇団ロワゾにおける最古参の演出家であり、過去からいま現在と数多の舞台の演出を手掛けてきた、劇団ロワゾを代表する演出家である。
 タカが翼を広げるように常に挑戦的でダイナミック、それでいて絹糸の間を縫うように舞う小鳥さながらの繊細さを兼ね備えるアルマンドの演出は劇団ロワゾの本拠地であるローレアはもちろん、国外でも非常に高い評価を得ている。
 ロワゾ歌劇からギリシャ悲劇、シェークスピア、日本戯曲までと幅広い作品を手掛け、特に彼独自のまなざしと感性で解釈された古典戯曲及びグーズグレイ歌劇は国際的にも人気を博し、そんな彼は観客からよく劇団ロワゾのコウノトリ──「シゴーニュおじ様」の愛称で親しまれている。
 ルニ・トワゾ歌劇学園卒業生。在学時はアトモスクラスに所属し、主にクロウを担当していた。卒業後に入団した劇団ロワゾにて数年間クロウとして舞台に出演し、念願叶ってレイヴンに初抜擢されるも、稽古中に片脚を複雑骨折する大怪我を負い、役者生命が断たれる。それでも演劇への情熱を捨てきれなかったアルマンドは演出家へ転身することを決意し、果てしのない研鑽と度重なる苦悩の末に無数の名作(本人曰く、無数の名作と奇作が過ぎて愚作めいた数本の名作)を生み出してきた。
 また、アルマンド・ダイアモンドという名は演出家としての彼のペンネームであり、本名はアーモンド・ウッドランドという。役者として舞台に立っていた頃は本名のアーモンドを名乗っていたが、演出家として転身し、それが自身の天職であると確信すると同時に、彼は演出家として今度こそ弛まず砕けず歩めるように自らに「アルマンド・ダイアモンド」という名を付した。そして、それこそがアーモンド・ウッドランドという役者の演じる最後の役であり、アルマンド・ダイアモンドとしての最初の演出だったのかもしれない。
 そんなアルマンドは普段から自分を律し、他人を律する厳格な人物である。その厳たる様子はロワゾ内外でも有名であるが、彼がシゴーニュという愛称で親しまれているのからも察せるように、彼の言葉や行動の節々からは劇団と役者、そして舞台への底知れぬ愛を大いに感じ取ることができるため、アルマンドに指導を乞う役者や演出家は後を絶たない。マドンナやレディバグらが師と仰ぐのも、また彼アルマンドである。
 いつか、近い将来、彼のようにすばらしい舞台をつくり続ける演出家はこう呼ばれるのかもしれない。「シゴーニュ」と。
 余談だが、アルマンドは大の鳥好きである。私の執務室で飼っている鳥たちを眺めては「わざわざ鳥籠に入れて飼う者の気が知れん」と小言を言うが、たびたび訪れては鳥たちを愛でて帰るところを見るに、私の執務室は彼のお気に入りの息抜きスポットであることは間違いないのだろう。

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