ソリドュ・ソレユンヌ


 ルニ・トワゾ歌劇学園三年。
 独創性に富んだクラス、エグレットに所属し、主に名前付きのクロウ、場合によってはレイヴンを担当する。
 まず、ソリドュは役者として器用である。その持ち前の器用さからもたらされる役者としての振り幅というものは、彼の場合、非常に多岐に渡る。ソリドュの担任であるダリアは、そんな彼の器用さを気に入っており、ソリドュに任せる役は多種多様種々雑多ピンからキリまでなんでもありといった様相を成している。
 本人はあまり語ろうとはしないが、ソリドュは十三歳の折に実母を亡くしており、それからほどなくしてできた継母が演劇好きだったため、多少なりとも目に留めてもらえるように、というのが彼をこの舞台に上がらせたきっかけであった。複雑な家庭事情の中に置かれたソリドュは、自分と継母との関係を良好なものであるとは感じておらず、しかしそれでも彼はこの演劇の世界から降りることができなかった。
 そのような環境で育ったからだろうか、彼は自らの演劇に対して「上手くやること」、「失敗をしないこと」、そして「他人に評価されること」を極めて重要視している。人からの評価に重きを置くのは、無論、役者という生き方をする上でたいせつなことである。しかし、平たく表現するのならば、ソリドュは人の目を気にし過ぎた♂焔Zをし過ぎて≠「るのだ。それは彼の深刻な課題であり、これからも向き合っていかなければならない問題となるだろう。
 また、彼が入学時に組分けられたクラスは、本来アンチックが担任するアトモスクラスであった。けれども、入学を目前とした春に継母がソリドュの義妹に当たる娘を出産した時分から、彼は舞台上で一切動けなくなり、そんな本人の希望によって入学後すぐにエグレットクラスへ転科することとなった。
 彼の元担任であるアンチック・アーティーチョークは、彼を死なせないための選択をし、現担任のダリア・ダックブルーは彼を生かすための選択を行った。そして、ソリドュ自身、死にたくなかった。人ひとりとしても、またおそらく、役者としても。
 その後は教師たちと共にリハビリに努め、二年次の夏頃よりクロウとして舞台に復帰し、現在は前述したように名前付きの役を主に務めている。
 余談だが、ソリドュが演じる様々な役の中で、最も観客からの評判が良いのは生真面目かつ破滅的な騎士や従者の役である。これは冗談めかした言動を好む、普段の飄々とした彼の様子からは想像が付かない者も未だ多いが、じつのところ、私はそこに大きなギャップを感じてはいない。
 何故ならば、彼を彼として常に生かしも殺しもしているのは、彼の内側に眠り、舞台の上だけで痛烈に呼び起こされる、彼の激しい感傷であるのだろうから。



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