ヴィオレッタ・ウィスタリア


portrait

 ルニ・トワゾ歌劇学園三年。愛称はヴィオラ。
 声での表現が得意なクラス、ココリコに所属し、主にスワン及び名前付きのダッキーを担当する。
 数年前に起きた火災から、発声することが叶わないとされているが、彼の表情や所作は恐ろしいほどに饒舌であり、その堂々たる繊細さ、繊細たる堂々さは演劇にも一切の支障を感じさせないほどの存在感を発揮している。
 彼の行う一切合切が、彼の言葉だ。
 入学当時、彼はどのクラスからも欲されたが、声での表現を得意とするクラス、ココリコの担任教師が「誰がなんと言おうと、彼は話している。彼のすべては声である」と語り、彼という役者を己がクラスに手に入れた。
 同クラスのホワイト・ファーストフロストとはスワンを競い合う仲だが、昼食は一緒に摂っていることが多い様子。
 数年前の火災は彼の演技に嫉妬した同期による事故に見せかけた放火。
 医師の診断によると、ヴィオレッタの発声機能はすでに回復しているが、かつての透き通るようなあの声は戻ることはないだろう、とのこと。
 ゆえに、彼は声を捨てたのだろう。
 舞台を降りる気はない、と彼の言葉が語っている。

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