ソナタ・ソレントゴールド


portrait

 ルニ・トワゾ歌劇学園三年。
 独創性に富んだクラス、エグレットに所属し、主に名前付きのクロウを演じることが多いが、現在、彼は自分自身が演技をすることよりも、舞台上で使う劇中歌の制作に力を入れているようだ。
 そんな彼が作曲を始めたのは、二年の春。
 エグレットの担任、ダリアが迫る締切に悲鳴を上げていた頃、ソナタが普段から日記代わりにつけている詩集がダリアに見つかり、そんな彼の作詞の才能に目をつけたダリアは、これはしめしめと彼にエグレットの舞台で使う、一つの劇中歌の作詞を投げつけてきた。
 ソナタが作詞したその曲は『ノーマンと頷くきみ』は無事舞台で使われ、好評を得た。それからというもの、彼は音と戯れることに半ば傾倒しつつも、作曲活動に勤しんでいる。
 また、ソナタは身体があまり強くない。
 幼い頃などは、ほとんどベッドの上から動けず、絵本と音楽ばかりに触れて過ごす日々を過ごしていた。ゆえに、彼は恵まれた才能を持っていつつも、長い時間舞台上に立つことができない。
 けれども、彼は諦められない。
 かつて一人だった彼を、決して孤独にはしなかった物語を、音楽を、それを輝かせる舞台を。
 だから今、彼はここに立っている。
 一秒でも長く、舞台に立つために。一秒でも長く、響く歌を書くために。
 一秒でも長く、誰かを孤独にしないために。
 余談だが、彼の眼鏡にレンズは入っていない。

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