アトモス


 空間を用いる表現を得意としたクラス、それがアトモスである。アトモスには、演技を第一の武器にと志す生徒が数多く所属する。
 アトモスはルニ・トワゾ歌劇学園にて三番目に設置されたクラスであり、劇団ロワゾ発展の功労者、脚本家兼演出家グースグレイ・クリアスカイが考案したクラスとなっている。
 現在のクラス担任は、現役時代は稀代の名脇役として無数の舞台に引っ張りだこであった元クロウ、アンチック・アーティーチョークが担当し、彼の指導内容は無論空間表現だけに止まらなず、その指導方針の重きは長所をより広げることにある。
 アトモスとは「大気」。「空間」である。
 空間表現および演技指導はもちろんのこと、アンチックはいかにして空気の揺らぎに感情を乗せるか──息遣いと立ち位置を言葉にし、そこに生きている人の感情とし、観客へと届ける方法、その場で呼吸のみを行い、流れる空気だけで話してみせる方法、そこでしかあり得ない立ち位置、そこに在るだけで世界を形づくれる立ち位置を見付ける方法、自身が持ち得る空間での表現方法を生徒へと指南する。
 彼らは空間を用いて時に火となり、水となり、風となり、土となり、光にも闇にもなる。
 如何なるときでも空気を味方に付けるのだ。舞台の拡大のために。物語のために。そして、彼らは少しずつ巣を作る。それは、決して死なないために。

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