クーデール


 身体での表現を得意としたクラス、それがクーデールである。クーデールにはダンスを第一の武器にと志す生徒が数多く所属する。
 クーデールはダンス演技に特化していた劇団ロワゾ初代ピーコック、ピーコック・ピジョンブラッドが考案したクラスとしても有名で、ルニ・トワゾ歌劇学園創立から十年後に設置されたこのクラスは、ココリコに次いで二番目に歴史の古いクラスである。
 現在のクラス担任は、ロワゾ・ミュージカルといえばまずその名が上がる現ピーコック、ガーネット・カーディナルが担当し、彼の指導内容は無論ダンスだけに止まらず、その指導方針の重きは長所をより尖らすことにある。
 クーデールとは「羽ばたき」。「身体表現」である。
 ダンス指導はもちろんのこと、ガーネットはいかにして身体の動きに感情を乗せるか──ダンスを言葉にし、そこに生きている人の感情とし、観客へと届ける方法、その場で一言たりとも発さずに、手足だけで話してみせる方法、どれほどの距離にあってもより大きく、より小さく己を見せる方法、自身が持ち得る身体での表現方法を生徒へと指南する。
 彼らは身体を用いて時に火となり、水となり、風となり、土となり、光にも闇にもなる。
 如何なるときでも身体を動かすのだ。舞台の躍動のために。物語のために。そして、彼らは少しずつ巣を作る。それは、決して負けないために。

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