ココリコ


 声での表現を得意としたクラス、それがココリコである。ココリコには、歌唱を第一の武器にと志す生徒が数多く所属する。
 歌劇学園と名を冠しているこの学園にとって、ココリコクラスはその歴史が最も古く、声を用いた表現というのは、劇団ロワゾの幾多に枝分かれした川の源泉に存在すると言っても過言ではないだろう。
 現在のクラス担任は、劇団ロワゾの代表的な現メルル、マドンナ・マジェンダが担当し、その指導内容は無論歌だけには止まらず、その指導方針の重きは長所をより伸ばす点にある。
 ココリコとは「鳴き声」。「声」である。
 声楽指導はもちろんのこと、マドンナはいかにして声に感情を乗せるか──台詞を言葉にし、そこに生きている人の声とし、観客へと届ける方法、その場を一歩たりとも動かずに、声だけで動いてみせる方法、観客に背を向けながら、しかし二階席まで声を届ける方法、自身が持ち得る声での表現方法を生徒へと指南する。
 彼らは声を用いて時に火となり、水となり、風となり、土となり、光にも闇にもなる。
 如何なるときでも声を上げるのだ。舞台の調和のために。物語のために。そして、彼らは少しずつ巣を作る。それは、勝ち続けるために。

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