ルニ・トワゾ公演


 ルニ・トワゾ歌劇学園では、年に複数回の公演が行われ、一般向けのチケット販売も行われる。
 年度によって様々な臨時公演や生徒教師による思い付きから突然に開催されるゲリラ公演なども多々あるが、そういった例外を除けば主だった一般向け公演は年七回行われる。
 まずは学園に入学した新入生が主演に据えられる、四月下旬の新人公演「プッサン」。
 次に五月上旬の春公演「アルエット」、七月下旬の夏公演「アロンデル」、九月下旬の秋公演「ルージュゴルジュ」、十一月上旬に催される学園祭に合わせた学祭公演「キャナリ」──こちらは後夜祭にて教師も公演を行う──それから、十二月下旬の冬公演「エトゥルノー」。そして最後に、三月上旬の卒業公演「トワゾ・ド・パサージュ」である。
 卒業公演以外の六回公演は、そのすべてがクラス対抗で行われ、どのクラスの舞台が最も優秀だったかを、チケットを購入して観劇をした一般のオーディエンスに投票してもらい、その投票結果によって優勝を決める。また、優勝クラス以外の順位を発表することはない。
 もし、春夏秋冬の公演で四回連続で優勝を勝ち取ったクラスがいたならば、そのクラスは劇団ロワゾの一番はじめの劇場である、エクラン劇場にて公演を一つ行うことが許されるが、ここ数十年はそのようなクラスを見ていない。絶え間なく努力を続ける彼らの実力は、常に拮抗しているのだ。
 舞台の優劣など、観る人間の好みによって異なるものだ。順位などつけるべきではない。
 そのように言う者も少なくはないが、けれども、私はあえて言おう。
 順位は、つけるべきだ、と。
 彼らはまだプロフェッショナルにはほど遠い、学生の役者たちだ。しかし、だからこそ、彼らは知っていなければいけない。解っていなければならないのだ。
 我々は、そういう残酷で愛おしい観客たちの前で立つことを選んだのだ、と。
 その自覚がなければ、これから先、舞台に立ち続けることはできないだろうから。

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