清掃


 ルニ・トワゾ歌劇学園では使用教室はもちろんのこと、学園の至る箇所の清掃を毎朝決められた時刻に生徒が行っている。
 清掃を担当するのは主に一年生であり、二年生は清掃の指導、三年生は清掃後のチェックを務めるという点はどのクラスでも変わらないが、清掃場所や清掃方法は各クラスによって異なる。
 たとえばココリコクラスではピアノの手入れを行うとき、指示された音を指示された一定のリズムで一切の乱れなく鳴らしながら′ョ盤を拭くことを要される。クーデールでは階段清掃を行うときに二人一組が全く同じ歩幅、同じ動き、同じ速度で隣り合わせに$エ掃することを要され、アトモスでは学年集会や全校集会などが行われる大広間に置かれた長椅子の清掃時に一列目の三脚目の次は二列目の五脚目というように、決められた順序を守りながら¢|除することを要される。無論それは独創性を謳うエグレットも同じことで、彼らもまた窓掃除をするときには決められた生徒が指定された順に窓を拭き、それを追いかけるように別の生徒が桟を掃除して、また別の生徒が窓を閉めるという動作を、定められた動きの回数で時間内に¢|除し切ることを求められている。
 毎日同じ時間に同じ場所で同じ動きをくり返させる学園の清掃活動について、一年次の当初には辟易して不満を抱く生徒も少なくはない。しかし彼らも未来の舞台人として学んでいく上で、半年も経てば或るとき、或る瞬間にこんな事実に気付くであろう。
 舞台には、美しい群が求められる、ということを。
 そしてその役割をルニ・トワゾ歌劇学園では、言わずもがな下級生が務めることが多い。
 故に、この清掃こそが舞台上で一糸乱れぬ群となるための基盤となる、じつに地味で、最も冴えたやり方なのだ。その上、学園内も美しく保たれ、生徒間でのコミュニケーションの向上も図れるのだから、一石三鳥である。

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