ルニ・トワゾ歌劇学園


 世界有数の劇団である、「劇団ロワゾ」の初代主演男役であったレイヴン・レグホーンが一八九一年に創立し、運営を行った全寮制の歌劇学園。フランスとスペインの間に存在する小さな国、ローレアの首都、エクランに本部を置いており、こんにちでの学園の保有、運営は劇団ロワゾが行っている。主に十五歳から十八歳の生徒が学園にて就学を行う。男性の役者のみで構成されている劇団ロワゾと同じく、ルニ・トワゾ歌劇学園も生徒、教職員そのすべてが男性のみで構成されている。現在の学園長はこの私、レッドアップル・レグホーンが務めている。
 ルニ・トワゾ歌劇学園は劇団ロワゾ内に止まらず、世界の演劇をより豊かに、より強かに成長、進化させていくことを目的に、有望な舞台役者を育成、世に輩出している。創立当初は当時の劇団ロワゾの主だった演目であった歌劇を中心に授業を行っていたが、現在では歌劇だけに囚われず、様々なスタイルの演劇を追求し、生徒だけではなく学園側も常に変化を求めながら学園の運営を行っている。特待生制度も豊富であり、舞台にかかわるどのような小さな才能の芽も摘み取られることがないよう、学園側はたゆまぬ努力をする生徒に対しての支援を決して惜しむことはない。
 また、校歌として『鳥は少しずつ巣を作る』という歌があるが、これは生前のレイヴン・レグホーンの口癖であり、彼の孫だった二代目学園長レイクネス・レグホーンの意向によって毎年そのメロディが変わる。
 勝ち続けるために、生きるために、負けないために、死なないために、鳥は少しずつ巣を作る。そうして彼らは歌い、跳ね、舞い、時にはその羽で大気を切る。そういう物語を生きている。
 そしてそれは、我々のような舞台人にとっても同じことだ。私たちは皆、物語の上で生きている。生きていくことを選んだ人間なのだ。
 晩年、レイヴン・レグホーンはこうも言った。
「死ね。物語がそう言うのならば」
 と。

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