楽団ラマージュ


 劇団ロワゾを母体とし、劇団ロワゾ及びルニ・トワゾ歌劇学園に専属しているオーケストラ楽団。また、自主運営団体として「ラマージュ・フィルハーモニー」を組織して、劇団ロワゾが有する数々の劇場にてコンサート活動を行なっている。
 楽団ラマージュの歴史はそのまま劇団ロワゾのエクラン劇場の歴史であるが、正確な創立年は不明。ただ、レイヴン・レグホーンがローレアにてエクラン劇場を購入した際に、エクラン市内の音楽家をかき集めてオーケストラ・コンサートを行ったことが楽団ラマージュの始まりともされている。
 初代楽団長は作曲家としてこの世に「誰もがどこかで一度は聴いたことがある」名曲を数え切れないほどに残し、首席指揮者、音楽総監督としても非常に著名であるラヴバード・ラマージュが務めた。現在の楽団長はラマージュ家と血の繋がりはないものの、作曲家兼首席指揮者兼音楽総監督として、ラヴバードの時代を想起させるほどに多才なラフス=ククラトゥス・ラマージュが務めている。
 楽団ラマージュの仕事は何も、劇団ロワゾやルニ・トワゾの公演での演奏だけにとどまらない。公演にて用いる楽曲の作詞作曲、ラマージュ・レーベルとして劇団ロワゾ及びルニ・トワゾ公演で上演された録音の制作販売や、ルニ・トワゾでの通常レッスンにて臨場感を出すために生演奏を行うことも常としてある。
 また、楽団ラマージュは自らをオーケストラと名乗ってはいるが、それもおよそルニ・トワゾが歌劇学園と名乗っているのと似たようなもので、彼らは管楽器や弦楽器以外にも、様々な楽器を使用して演奏を行っている。たとえ楽器と呼べないものでも、彼らが手にしてしまえばそれは当然にそのからだから楽の音を奏で出すものだった。
 劇団ロワゾを母体としているだけあり、楽団ラマージュもまた才ある者を拒まない。ラマージュには当然、然るべき音楽学校を卒業した奏者が数多く在籍しているが、仲にはそうでない者もやはり──数多く在籍している。彼らは才ありと思えば、我らのルニ・トワゾからだって人員を確保しようとするのだ。おそるべきことに。
 楽団ラマージュでは、将来の団員候補は三年の待機期間を経て適材と判断されたのちに、ラマージュでの正式団員となる。
 では、その三年の待機期間で何を行うのか。
 それは無論、演奏である。ラマージュの待機団員たちは、ルニ・トワゾでの季節公演にて、舞台のオーケストラピットの中、正式団員たちと共に物語のための美しい音色を奏でるのだ。ルニ・トワゾ公演にて演奏を行う奏者の約三分の一は、ラマージュの待機団員で占められている。
 彼らもまた、楽器一つばかりを手に、鳥のさえずり、羽ばたき、空の広大さ、羽飾りの煌めきを表現するのだ。いつでも、音楽は物語と共に在る。

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