エグレット


 独創性を重んじるクラス、それがエグレットである。エグレットには、個性を第一の武器にと志す生徒が数多く所属する。
 エグレットは現在の三年生が一年次の頃に新設されたクラスであり、ルニ・トワゾ歌劇学園に四つ目のクラスを、と発案をしたのは、劇団ロワゾの生きる伝説であるダリア・ダックブルーその人だ。
 クラス考案者であり、現在のクラス担任でもあるダリアは、現役時代は有名レイヴンとして舞台を熱狂させ、現在は劇団ロワゾおよびルニ・トワゾ歌劇学園公演にて使用する脚本のほとんどを手掛けている脚本家兼演出家である。彼の指導内容は基礎的なものから突飛なものまでと多岐に渡り、その指導方針の重きは長所をより生み出すことにある。
 エグレットとは「羽根飾り」。「個性」である。
 役者として舞台での新たな表現を常に求め続けるのはもちろんのこと、ダリアは生徒が自らの道を発見し、そこに向かってひた進むための方法を共に模索する。このルニ・トワゾがクラスを新設し、表現手法を増やし、幾多にも枝分かれしてきたように、道とは必ずしも一つではなく、真実もまた一つとは限らない。
 人々が身に纏うものを選択するように、生徒たちもまた、己のための羽根飾りを選択するのだ。舞台で羽根飾りを身に着ける者となるのか、羽根飾りを作る者となるのか、それとも羽根飾りそのものになるのか。ダリアは自身が持ち得る経歴と発想で、この学園の自由と創造を生徒へ指南する。
 彼らは創造力を用いて時に火となり、水となり、風となり、土となり、光にも闇にもなる。
 如何なるときでも自らの発想を信じるのだ。舞台の創造のために。物語のために。そして、彼らは少しずつ巣を作る。それは、生き抜いていくために。

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