呪いと名のつくすべて洗って


(ワイツ)
「うん?」
(うんじゃない。そこから降りろ、危ない)
「この程度の柵から落ちるほどヤワじゃないぞ」
(舞台と関係ないところで怪我でもしてみろ。呪われるぞ)
「誰に」
(マドンナ先生)
「これが聞こえてたら確かに呪われそうだがな。裏拳で」
(とにかく降りろよ)
「分かった、降りる。お前は存外心配性なんだよ、ヴィオラ」
(違うね、お前に危機感がないだけだ)
「そんなことはないと思うが」
(あるよ。歌えなくなったら死ぬくせに)
「まあ、死ぬだろうな」
(ワイツ)
「うん」
(お前、なんで歌うんだ?)
「これでしか物が言えないんだ、俺は」
(……ふうん)
「歌っているときでないと、誰かの物語の上でないと、顔が上手く動かない。そういうふうになってしまった」
(馬鹿正直に話すよなあ)
「それが俺の美徳だ」
(自分で言うか、普通? ま、……でも、ホワイト=Aだもんな)
「名は体を表すと言うだろ」
(ワイツ)
「なんだ」
(つまらない色にはなるなよな)
「まさか。俺をなんだと思ってるんだ」
(ライバル)
「だろう」
(そして、スワンだ)
「ああ、その通り。そしてお前もだよ、ヴィオラ」


2021/04/27

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