ふたしかたしか


「なぁ、俺のこと好き?」


ベッドにふたり沈んで、唾液と精液まみれの夜を明かすとき。

グリーンは決まって僕にそう問いてくる。

しかも、行為に夢中で他のことなんて考えられないときに限って。

僕に覆い被さってる緑目の獣のことしか考えられないのに。

なんて卑怯なの。



「なぁ、レッド」

何も答えない僕にじれたのか、一時止めていた律動を再開する。


「ぅあ、あっ…ぐ、りーん」


いきなりの衝動に思わず喘ぐと、えっろい顔、と口角を上げられた。

くそ、格好いい!

ずるい、ずるい。
僕ばっかりどんどん溺れていってしまう気がする。



「なぁ、れっど」

それでも何も囁かない僕に不安を覚えたのか、
情けない顔で縋ってきた。

だから残念なイケメンなんて言われるんだよ。
ばか、ばか。

何年一緒にいると思ってるの。

言わなくたって分かるでしょう?




「…ぐりーん、は」


やっと言葉を発した僕に、嬉しそうに顔を向ける。
あーあ、千切れんばかりの尻尾が見える。

なんでだろう?
ジムではあんなにかっこいいのに。

可愛くみえるから僕も僕なんだけど。



「ぐりーんは、僕が好きでもない男に股を広げる奴だと思ってるの」


言っとくけど、僕おとこなんだよ。
分かってると思うけど。

男が男に組み敷かれて屈辱を感じないとでも思ってるの。


ねぇ、この先は言わなくたって分かるでしょ。





「愛は言葉じゃないんだよ」





僕の言葉に目を見開いて、一瞬考えた後。
かぷり、鼻を甘噛みされた。

「痛っ」

「俺はそうは思わないぜ?」


なんで、と視線を向ければ止まっていた腰をぐっと引き寄せられて。
身体の奥に圧迫感。

「ぅあっ…」

苦しい。苦しい。けれど気持ちいい。
ほら、これって恋に似てない?


「男だって女だって好きでもない奴とセックスできんじゃん」

彼は、はぁーっと息を深く吐いて。
もっと欲しいと叫ぶ色をその綺麗な緑瞳に宿して。
僕に反論するものだから。

僕もむきになって反論してしまう。


「…っそれなら『好きだ』って嘘付くことも出来るよ」


言葉じゃなくて、身体なら。
気持ちが入ってるセックスとそうじゃないのなんてすぐ分かるでしょ。

好きだよ、好きだよって。
言葉じゃ伝えきれない想いを分かって欲しい。




「……俺毎日セックスできないから言葉で溢れちゃうんだけど?」

誰かさんのせいで。


「……例えマサラに帰っても毎日は無理でしょ」

もちません。





ちぇーと拗ねる僕の前だけは子供っぽい彼に、キスをひとつ贈って。


言葉を選んで、慎重に。
いつも言葉少ない僕だからこそ。

現しがたいこの気持ちが届くように。



「……じゃあグリーンは毎日小さく小さく好きを贈ってよ」

積み重ねて、積み重ねて。
僕をずっと愛で浸して。


「いつもしてんじゃん、じゃあレッドは?」

「僕はその代わり一度だけおっきな好きをあげるよ」


一度だけ?

そう、一度だけ。



「死ぬ前に、一度だけ」

君だけに。




「なんだそれ、狡い」

泣きそうに緑の瞳が歪む。

綺麗、綺麗、零れてしまいそう。
緑色の世界が溢れてしまう。



「死ぬ、そのときまで傍にいてくれんの?」


只の情事の言葉遊びから真剣な愛の計り合い。

ふたしかなようで、たしかなもの。

あるよ、あるに決まってる。
僕には見えるよ。

君もそうでしょう?



「僕をなんだと思ってるの」

「レッド」


「……君をなんだと思ってるの」

「……グリーン?」




ばぁか、そういって口づければ。
滅多にない行動に驚いて顔がまっかになるジムリーダーに。



そっと、耳に口をよせて。









(僕を、好きにできるのは世界で君だけなんだよ)











ふたりをつなぐふたもじのことば
(そんなこと恥ずかしくて言えないけれど)






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